#030

露草色の空に虹を見る、「清明」と「穀雨」の頃。

爽やかな山の香、海から吹く柔らかな風、早朝の明るい空の色など、季節が初夏に向かっていることを感じる頃です。八十八夜の茶摘みが始まる芦北の「茶園」、八代で400年以上の歴史を重ねる窯の「茶道具」の文様、八代市で40年以上開かれている「蛇籠の朝市」をご紹介します。

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「穀雨」を過ぎると、こよみの上では「夏」。
4月中旬になると県内で茶摘みが始まり、夏が近いことを感じます。
熊本県は全国屈指の栽培面積を誇るお茶の名産地。葦北郡芦北町告(つげ)地区で伝統の製法を守りお茶の栽培と製茶を手掛ける梶原さん夫妻を訪ね、茶摘みの頃の茶畑の様子と、夏におすすめのお茶の飲み方を教えていただきました。
幕末まで細川藩の御用窯を務めた「八代焼(高田焼)宗家 上野窯」。その13代目・上野浩平さんに、季節を味わう茶道具の文様についてお話を伺いました。
早朝の清々しい空気に誘われて、県内各地の朝市が賑わう季節です。その中で、毎週日曜日に開催されている八代市蛇籠町の小さな魚の朝市に出かけてみました。

萌黄色の葉が初夏を告げる
芦北町告(つげ)の「茶」畑
熊本県は全国屈指の栽培面積を誇るお茶の名産地。清流の上流に産地が点在し、毎年4月中旬から各地で茶摘みが始まります。熊本県南部の葦北郡芦北町告でお茶の生産と製茶を手掛ける梶原(かじはら)敏弘さんと妻の優美子さんを訪ね、一番茶の茶摘みの頃の畑の様子と、夏の時期に美味しく味わえるお茶の楽しみ方を教えていただきました。
文様や形で季節を味わう
八代焼(高田焼)の「茶道具」
1602(慶長7)年に開窯(かいよう)し、幕末まで細川家の御用窯を務めた「八代焼(高田焼)宗家 上野窯」。13代目の上野(あがの)浩平さん(くまもと手しごと研究所・八代エリアキュレーター)に、高田(こうだ)焼の特徴である技法「象嵌青磁(ぞうがんせいじ)」と陶土のお話、茶道具の文様の意味などについてお話を伺いました。
不知火海の旬が躍る
蛇籠の「朝市」
八代市蛇籠(じゃかご)町の漁港で、昭和50年頃から毎週日曜日の早朝、5~8軒(多い時で10軒ほど)が店開きする、小さな魚の朝市が開かれています。初夏にかけて、イカ、スズキ、ちりめん、夏はワタリガニやタイワンガザミなど不知火海の旬の魚が届きます。早朝の空気が心地よい季節、県内各地で行われている朝市に出かけてみませんか。

萌黄色の葉が初夏を告げる

芦北町告(つげ)の茶畑

立春(2月4日頃)から数えて88日目にあたる「八十八夜」(5月2日頃)。
昔から、この日に摘んだお茶は長寿などの縁起物とされています。
熊本県は全国屈指の栽培面積を誇るお茶の名産地。清流の上流に産地が点在し、毎年4月中旬から各地で茶摘みが始まります。
葦北郡芦北町告でお茶の生産と製茶を手掛ける梶原(かじはら)敏弘さんと妻の優美子さんを訪ねました。奥深い山の中にあるこの地域は、冬は気温が低く、霧が深く、昼夜の寒暖差が大きいなど、良質のお茶の栽培に適した環境にあります。梶原さん夫妻は、自生する山茶や、芦北町内の数ヵ所の茶畑で農薬を使用せず、有機質肥料を主体とした農法でお茶を栽培。その茶葉を使い、釜炒り茶、和紅茶、発酵茶、釜炒り茶とハーブのブレンドティーなどを製造しています。
3月下旬になるとお茶の木の先端から萌芽(ほうが)が顔を出します。割れた芽が伸び、3~4枚に開くのが4月下旬。それから5月中旬にかけて一番茶の茶摘みが行われます。
「茶摘みの頃、茶畑は新茶の芽で萌黄色(もえぎいろ)の絨毯のようになります。朝はまだ冷えて、畑には凛とした空気が漂います。練習中の新米ウグイスの鳴き声を聞きながらお茶を摘むんですよ(笑)」と優美子さんが教えてくれました。
摘んだお茶をそのまま直火の釜で炒るのが「釜炒り茶」の特徴。梶原家に代々伝わる釜から、爽やかな”釜香(かまが)”が漂います。揉んで乾燥させ、仕上げに丸釜で炒り、勾玉(まがたま)状の釜炒り茶が誕生します。
「夏は水出し茶にしても美味しいですよ。浄水500mlあたり10g(ティースプーン山盛り5杯程度)の茶葉をティーバッグに入れて浸し、冷蔵庫に入れて1時間経ったら引き上げます」と敏弘さん。スタイリッシュなボトルに入れて外出時に持参したり、食事の時に食中茶として楽しんでみませんか。

■お茶のカジハラ
所在地:葦北郡芦北町告644
TEL:0966‐84‐0608
http://www.kajihara-chachacha.com
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「お茶のカジハラ」の和紅茶は、まろやかな味わいと香りの良さが特徴。県産のドライフルーツ(オレンジ、リンゴなど)を入れてフレーバーティーにしても美味しい。レモングラスと釜炒り茶をブレンドした珍しいお茶も。
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「釜炒り茶」は、茶葉を400℃ほどの直火の釜で炒る、日本古来の製法が特徴。写真は梶原家に代々受け継がれる釜。
※写真は梶原敏弘さんにお借りしました。
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「釜炒り茶」は、勾玉(まがたま)状の形と、爽やかな香りとすっきりした味わいが特徴。
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芦北町の特産品の一つ「黒糖」は、紅茶はもちろん、釜炒り茶にも良く合うとか。
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山の中に自生している茶の木。その近くには清らかな水が流れている。
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【写真(左)】
自生茶の前で、「お茶のカジハラ」園主・梶原敏弘さんと妻の優美子さん。
【写真(右)】
芦北町天月の丘の斜面に広がる、梶原さんの茶園。芦北町内の数ヵ所でお茶を栽培している。(写真は3月中旬の茶畑)
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茶摘みの時期の畑の様子。お茶の新芽が育ち、一面が萌黄色の絨毯のようになるとか。
※写真は梶原敏弘さんにお借りしました。

文様や形で季節を味わう

八代焼(高田焼)の「茶道具」

「八代焼(高田焼)宗家 上野窯」(八代市日奈久東町)は、1602(慶長7)年に開窯(かいよう)し、幕末まで細川家の御用窯を務めました。上野家には、細川藩の御用絵師から届いた茶道具の指図書などの貴重な資料が残っています。
上野窯13代目の上野(あがの)浩平さん(くまもと手しごと研究所・八代エリアキュレーター)に、高田(こうだ)焼の特徴と「茶道具」など器の文様についてお話を伺いました。
高田焼の大きな特徴に「象嵌青磁(ぞうがんせいじ)」があります。象嵌は、素焼き前の素地に文様を彫り、その部分に長石を埋め込み焼成する技法です。もともと朝鮮の高麗時代に発達したもので、現在日本では高田焼だけがこの技法を継承しています。雲鶴手(うんかくで)、三島手(みしまで)、暦手(こよみで)といった伝統的な文様、松・竹・梅などの縁起もの、桜・牡丹・菊などの、四季を表現する草花文様があります。
そして、もう一つの特徴が、唯一無二の器の色(青磁)。そのクールな色は、釉薬で発色させるのではなく「土」そのものの色。地元の山から黒土と白土を各々採取し、丁寧に不純物を取り除いた陶土を調合して使用します。
「青磁の茶碗には抹茶の濃い緑が、そして白土の茶碗には煎茶の柔らかな緑がよく映えます。また、夏は口の広い“平茶碗”を使うことでお茶の温度を下げ、冬は口が狭い“筒茶碗”で温かさを保つように、形にもおもてなしの配慮があるんですよ」
文様・形・色などその一つひとつに意味や意図があり、見るたびに新たな気づきがあります。器を通してさまざまな発見があり、作り手と無言の会話を交わすことができます。そんな素敵な味わい方や醍醐味を、上野さんから教えていただきました。

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【写真(上・左)】
茶碗に施された”露草”は夏の文様。他に朝顔、メダカなど夏を表現する文様もある。
【写真(上・右)】
茶事の時にいただく懐石料理の一品を盛りつける「向付(むこうづけ)」に、独自に考案した幾何学文様 ” 犀利文(さいりもん)”を象嵌。(13代目・上野浩平さん作)
【写真(下)】
伝統的な文様の意味や背景などを知ると、茶道具の楽しみ方が更に深まる。
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かつて細川藩の御用絵師から届いた茶道具の指図書。 鉢に「蝶」、急須に「松」の文様の指示がある。「松」は縁起物、「蝶」も”再生”や”繁栄”を意味する、縁起の良い文様だ。
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【写真(左)】
蝶の文様が施された、13代目・上野浩平さん作「象嵌青蝶文茶碗(ぞうがんあおちょうもんちゃわん)」。
【写真(右)】
「使わない時も眺めて楽しみ、使うたびに作者が器に込めた思いや意図など新しい発見がある器、使う人の気持ちに寄り添える器を作っていきたい」と語る、「八代焼(高田焼)宗家 上野窯」13代目・上野浩平さん。
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トヨタ自動車と全国のレクサス販売会社が主催し、日本の各地で活動する、地域の特色や技術を生かしながら、自由な発想で、新しいモノづくりに取り組む若き「匠」に対し、地域から日本全国、世界へ羽ばたくサポートをするプロジェクトをスタート。2016年度の匠(全52名)の一人に上野浩平さんが選ばれた。上野さんは、茶道のもてなしから着想を得た、新鮮で遊び心に溢れる陶製食器「HINEMOSU-ひねもす-」シリーズを制作。器の両面を表として使える「双向(もろむき)」のフォルムと、土の調合を段階的に変えて象嵌し、繊細なグラデーションを生み出す「朧象嵌(おぼろぞうがん)」により、表裏それぞれに「白と黒」「朝と夜」「始と終」など、繰り返される日々の移ろいを表現する。
■八代焼(高田焼)宗家 上野窯
所在地:八代市日奈久東町174 
TEL:0965-38-0416
http://www.aganogama.jp/

不知火海の旬が躍る

蛇籠の「朝市」

新しい季節の訪れを感じさせる、早朝の明るい空の色。昼から夜、夜から朝に向かう空の色や時間の移ろいを味わえる季節の始まりです。
八代市蛇籠(じゃかご)町の漁港で、昭和50年頃から毎週日曜日の早朝に小さな魚の朝市が開かれています。(4~9月は6:00から、10~3月は7:00から)
開始30分ほど前になると海から小さな漁船が2艘、そして港には魚を積んだトラックが1台、また1台と、どこからともなくやってきます。早速、顔なじみのお客さんが魚箱を覗き込んで「今日はハモはあるね?」「ヒラメは?」とやりとりが始まります。そして朝市の開始時間になると同時に、あっという間に売り切れて終了です。
もともとこの朝市は、市場が営業していない日曜日に、地元の人に八代の新鮮な魚や野菜を販売することを目的として始まったもの。現在は5~8軒、多い時で10軒の漁業者が店開きします。「4月から初夏にかけて、イカ(甲イカ、アオリイカ、ヒイカ、ミミイカなど)、スズキ、ちりめんなど、夏はワタリガニやタイワンガザミ、秋はカレイ、ヒラメ、タチウオなどが上ります」と八代漁業協同組合の宮本義孝さん。「申し訳ありませんが、潮の関係で、魚の量は毎回違います。豊富な時もあれば何もない時もあります」
あっという間に魚が売り切れて朝市が終わる頃、空はすっかり明るくなっていました。
熊本県内の各地で多くの朝市が開かれています。早朝の空気が心地よい季節に、朝市めぐりを楽しんでみませんか。

■蛇籠の朝市
開催場所:八代市蛇籠町(八代大橋近く、ゆめタウン八代裏、建馬町公民館前の港)
開催日/時間:毎週日曜日の朝(4~9月は6:00から、10~3月は7:00から ※開始と共に早く売り切れます)
問合せ:八代漁業協同組合 TEL0965‐37‐1757
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船に魚介を積んでやってきた塩上陽嗣(はるあき)さん。この日(3月下旬)の魚は、ガラカブ、チヌ、ボラ、アナゴ、ナマコなど。
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「蛇籠の朝市」が始まった頃(40年以上前)から出店している、松村廣(ひろし)さんと妻の千鶴子さん。この日持ってきたヒラメはあっという間に完売。
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【写真(左)】
「八代漁業協同組合」代表理事・組合長の宮本義孝さん。「不知火海は魚類が豊富。漁場はここから20分程度の近場にあり、朝市に並ぶ魚はとても新鮮です。潮の関係で魚の種類や量は毎週違います。量が少ない時や、ほとんどない日もありますのでご了承ください」
【写真(右)】
お客さんは、近所に住んでいる人や、新鮮な魚を求める飲食店の人など。価格の交渉をするのも楽しい。