#024

新しい年に祈りと願いを馳せる「冬至」と「小寒」の頃。

一年を振り返り、新しい年を迎える時期。熊本市のユニークな「ほうき」、芦北町の「吊し焼きえび」、荒尾市の「日本刀の初打ち」の話題をお届けします。

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2015年から2016年へ。
一年を振り返り、お正月飾りや鏡餅など年神様をお迎えする準備を終えて、清々しく新しい年を迎える時期です。
熊本市のクラフトショップに並ぶ、大掃除が楽しくなりそうな「ほうき」、芦北町の伝統漁法で獲る天然アシアカエビの「吊し焼きえび」を使ったお雑煮、年明けに「初打ち」を行う荒尾市の刀匠・松永源六郎さんが、美しい日本刀を仕上げるための手法についてご紹介します。

大掃除にいかが?

遊び心溢れる、ユニークな「ほうき」

暮らしにまつわる道具をデザイン・製作する、熊本市中央区本荘のクラフトショップ「OPEN STUDIO(オープンスタジオ)」。作品の展示・販売が行われるとともに、ショップを主宰する高光俊信さんと息子の太郎さんが工房で作業をする過程を見ることもできます。
これまで金属、ガラス、紙、木など多くの素材を使いながら、その機能性や美しさ、素材同士の相性などを模索してきた高光俊信さん。1997年に鍛金を学ぶために行ったアメリカでほうきに出合ったことから、世界各地に異なるデザインや編み方があることを知りました。「従来の掃除道具は見えないところに隠す存在ですが、私のほうきは普段は壁にかけてディスプレイし、必要な時にすぐ使えるところがいいんです。手軽に階段や部屋の隅などもきれいになりますしね」
高光さんがデザインするほうきのテーマは「男性が喜んで掃除をしたくなるほうき」。アイスホッケー、テニス、ゴルフ、ギターといった、ほうきの柄の部分にスポーツや楽器の道具を用いたシリーズなど、機能性はもちろん遊び心溢れるものばかり。ちりとり(銅、木、紙)と共に、全国誌でも多く取り上げられています。

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【写真(上)】
熊本市中央区本荘「OPEN STUDIO(オープンスタジオ)」に展示されているほうきとちりとり。金属製のちりとりは息子の太郎さんの作品。
【写真(下・左)】
紙製のちりとりは折り畳めるので持ち運びにも便利。
【写真(下・右)】
素振り感覚でお掃除?テニスラケット型のほうき。
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【写真(上)】
パソコンのキーボードの溝に入ったホコリなどを掃除できる、小さなほうき。
【写真(下・左)】
おろし金の目をきれいに掃除するブラシ。
【写真(下・右)】
「OPEN STUDIO(オープンスタジオ)」を主宰する高光俊信さん。ほうきキビ(ほうきモロコシ)を使用し、交互に糸を編み込みながら、あっという間に小さなほうきが完成。高光さんは1995年に阿蘇郡南阿蘇村にASOギャラリー(「阿蘇ものづくり学校」を併設)を開館。阿蘇に自生するススキを使い自分だけのほうきを編む体験講座を開いています。

「吊し焼きえび」で作る

芦北町のお雑煮

葦北郡芦北町の特産品「アシアカエビ」は、風の力を利用するうたせ船の底引き網漁「桁(けた)漁」で収穫します。アシアカエビが旬を迎える時期は11~12月頃。芦北町「みやもと海産物」では、旬の時期に合わせて「吊(つる)し焼きえび」の作業に入ります。
収穫したばかりの新鮮な天然アシアカエビを氷で締め、長い竹串に海老の身体が曲がらないように2尾ずつ腹合わせにして刺し、松の木の薪でおこした火に2時間程度くべてじっくり焼き上げます。その後、串から外して一つひとつを磨き、藁で編んで日陰で1週間から10日ほど陰干しして仕上げます。
アシアカエビを焼く工程の中で、焼く作業を中心となって行うのが、宮本家に嫁いで30年になる宮本三希子さん。この日、三希子さんに吊し焼きえびを使ったお雑煮を作っていただきました。
吊し焼きえびは水洗いして8時間ほど水に浸けておきます。その後、えびを入れたまま火にかけて沸騰寸前に火を弱め、煮たたせないようにコトコトと煮て出汁(だし)をとります。里芋、大根、人参、白菜、スルメなどの具も加え、柔らかくなるまで煮て、薄口醤油で味を調えます。丸ごと1匹のえびが入った豪華さと、たっぷりとした旨味と上品な甘味のお雑煮は、一年の始まりを飾るのにふさわしい豊かな味わいです。

■みやもと海産物
所在地:葦北郡芦北町鶴木山45
問合せ 0966‐82‐2320
http://www.miyamoto-ksb.com/syolist.htm
※くまもと手しごと研究所ホームページ「暦を感じる旬MOVIE」で吊し焼きえびの制作過程をご覧いただけます。
http://kumamototeshigoto-labo.jp/movie.php?movie=20
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【写真(上)】
吊し焼きえびで出汁をとったお雑煮の豊かな味わいに驚かされる。角を立てず物事が丸く収まるようにとの願いを込めて里芋、大根、人参は丸く切り、餅は丸いものを使う。エビは別の煮ものの具などに使っても良いとか。
【写真(下・左)】
「吊し焼きえび」は、松の木の薪で焼くことで光沢が生まれ、殺菌作用もあるという。
【写真(下・右)】
お雑煮を作ってくださった、宮本三希子さん。「みやもと海産物」の加工場と店舗の裏には穏やかな不知火海が広がる。「吊し焼きえびは水炊きなどの鍋料理にもおすすめですよ」
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【写真(左、右・上)】
「吊し焼きえび」は、松の木の薪で2時間ほどじっくり火を通した後、1週間から10日ほど藁で編み、陰干しして完成する。
※写真は「くまもと手しごと研究所」水俣・芦北エリア キュレーターの緒方竜二さんが撮影されたものです。
【写真(右・下】
昭和47年に創業し、ちりめん、いりこ、太刀魚、えびなど、不知火海で獲れた新鮮な海産物を使用した加工品を製造・販売している「みやもと海産物」

感謝と願いを込めて

日本刀の「打ち初め」

荒尾市「松永日本刀剣鍛錬所」の代表・松永源六郎さんは、刀匠になって38年。25歳の時に荒尾市の刀匠・川村清さんに弟子入りし、5年間の修業の後、文化庁の研修などを受けて独立しました。松永さんは有明海で採取した砂鉄を用い、古代製鉄法で玉鋼(たまはがね)を作り、炉で熱した後、大鎚で繰り返し折り畳む作業を行うという日本刀独特の手法で、純度が高く美しい刃に仕上げていきます。日本刀の品質を保つため「折り返し鍛錬」で純度の高い鋼を作り、刀の長さに打ち延ばし、形を整え、焼き、研ぐなど多くの工程を経て1本の美しい日本刀が誕生するのです。名刀を写し未来に受け継ぐ財産を作るため、その工程一つひとつに全神経を集中させます。
毎年1月3日に、松永さんは刀の「打ち初め」を行います。鉄の神様・天目壱個命(あまのまのひとつのみこと)を祀った祠(ほこら)にお参りしお神酒を捧げた後、初仕事を行います。その後、松永さんが創設した古武道「小岱流漸試道」の弟子たちによる抜き初めが行われます。
「打ち初め」と「抜き初め」には、昨年も事故なく日本刀を作ることができた感謝と、「この年も安全に良い仕事ができますように」との願いが込められています。

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【写真(上・下)】
優れた日本刀の条件は、「姿の良さ(全体の形やバランス)」と、「刃文の妙味」。松永さんが作る日本刀は年に15本ほど。
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【写真(左)】
2014年1月3日、玉鋼を大鎚で叩いて延ばし折り畳む「折り返し鍛錬」を行う松永源六郎さん。(撮影:松田久雄さん)
【写真(右・上】
玉鋼を作る際に使用する、有明海の砂鉄。
【写真(右・下】
作業場の入口に掲げられた「念」の文字。「今、この瞬間に集中する“念”の精神と、常に謙虚で柔軟であることの大切さを伝えたい」という松永さんの思いが表現されている。