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春と福を迎えるならわし。「節分」と「初午」。

季節は冬から春へ。加藤神社の「節分祭」や、熊本城稲荷神社の「初午大祭」など熊本の各地で、春を迎えるお祭りが行われます。

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春の「節分」に豆をまき、邪気をはらい清める

2月3日は「節分」です。本来は季節と季節の境目、つまり立春・立夏・立秋・立冬の前日をすべて「節分」と呼んでいましたが、最近では立春の前日のみを表す言葉となりました。
現代の節分の由来について聞くため、熊本市の「加藤神社」を訪ねました。熊本城を築城した加藤清正公を主祭神とし、1871年、熊本城内に創建された加藤神社。ここでは創建以来、「節分祭(せつぶんさい)」と呼ばれる神事をつづけています。権禰宜(ごんねぎ)の湯田崇弘さんによれば、2月3日をとりたてて「節分」と呼ぶのは古来から、春が魂のみなぎる季節で、運気の上がる時季と考えられてきたため。季節の変わり目には、邪気をばらまく鬼が生じるとされ、これを追い払うのが節分に豆まきをする理由なのだといいます。
「豆には穀物の霊が宿っていて、鬼を追い払うためには豆を投げるのが最も効果があるということで、節分の豆まきがはじまりました。神社自体は聖域ですが、立春に備え、さらに清らかな状態に整えようというのが節分祭。古くは平安時代の宮中行事に由来し、“鬼やらい”や“追儺(ついな)”神事と呼ぶこともあります。」と湯田さんは言います。
関東などでは著名人や厄年の人が「福豆」をまき、一般の方に“福を授ける”という形の節分祭も多くみられますが、熊本、とくに加藤神社では“邪気を清める”という意味あいが強いようです。
「宮司を先頭に “鬼は外!”と言いながら豆をまき、境内の邪気を鳥居の外まで追い出します。一度、鳥居の外へ出たら、今度は“福は内!”というかけ声とともに豆をまきながら境内へ戻ってくるんです。」
では、自宅で豆まきをする際にはどうしたらいいのでしょうか?「子どもが小さいうちは、私が鬼役となっていた。」と語る湯田さんに、おすすめの方法をうかがいました。
「家の中の邪気を外に出すという意味があるので、“鬼は外”で外へ向かって豆をまき、“福は内”で福を室内へ。鬼役の人は一度外に出た方がいいでしょうね。市販の豆には、鬼と福の2つのお面がついていることも多いので、外から中に入る際に福のお面につけかえて戻ってくるといいのではないでしょうか。」

【写真(上)】
境内の邪気を払う、加藤神社の節分祭。胸元から斜め上に向かって手をのばし、宙に豆をまくことで境内全体を清めます。
【写真(下)】
加藤神社の節分祭のもうひとつの神事「厄除け虎くぐり」。清正公が虎退治をしたという故事と、霊力の強い虎にあやかるものだそう。
【写真(右下)】
外へ出るときは鬼の面、内へ入るときには福のお面につけかえるのがおすすめです。

「柊鰯」が描かれた絵巻

節分の季語に「柊挿す(ひいらぎさす)」というものがあります。これは節分の夜、鬼を退散させる魔除けとして、鰯の頭をつけた柊の枝を門口に挿す「柊鰯(ひいらぎいわし)」という風習を表す言葉です。柊の葉の鋭いトゲが鬼の目を刺すため鬼が寄ってこないとされ、関東や関西など各地で見られるこの風習。熊本ではあまり見られない光景ですが、「天草テレビ」によれば、昨年、天草市で柊鰯の風習が描かれた絵巻が見つかったそう。百余匹の様々な妖怪や鬼たちが行列を作り、練り歩く様子を描いた絵巻は10メートルにもおよびます。目に柊が刺さって退散する赤鬼も描かれており、節分の風習が長く続いていることがうかがえます(民家に所蔵されているので、閲覧することはできません)。

【写真(上)】
天草市で見つかった「百鬼夜行絵巻」の全体(インターネット放送局天草テレビ提供)。
【写真(下)】
「柊鰯」で鬼が退散するシーンも描かれています(インターネット放送局天草テレビ提供)。

くまもと県産大豆の豆菓子でおいしい福をいただく

節分には、「年の数だけ豆を食べる」という習慣があります。「立春の前日となる節分は、年のはじめでいう大晦日と同じようなものです。この日に、火で炒って邪気を払った豆を食べることで福を取り入れ、春からはじまる一年の無病息災を願います」と湯田さん。熊本県産大豆を使った豆菓子などでおいしく福をいただくのもいいでしょう。

「熊本わらびもち きなこーや」の“焼ききなこ”は香り豊かな熊本産大豆フクユタカのきなこを使用し、香ばしく焼き上げた焼き菓子です。サクッとした食感と口どけの良さ、天草産の塩の風味やきなこの香ばしさが後を引きます。

甘みの強い熊本県産黒大豆クロダマルを使った「武双庵」の“肥後の黒豆おこし”は、大粒の黒大豆を水飴で練り上げた一品です。ほんのりとした醤油の香りと水あめのやさしい甘さがくせになります。クロダマルの“煎り黒豆”もあります。

「初午」に、稲荷神社へ「福まいり」

春の訪れを祝うお祭りといえば、初午(はつうま)祭です。今から約1300年前、2月最初の午(うま)の日に、伊勢神宮の外宮(げぐう)の神である豊受の大神を京都伏見稲荷大社に勧請したことにはじまる、稲荷神社のお祭りです。
“白髭さん”として親しまれる熊本市の「熊本城稲荷神社」は毎年、2月最初の午の日に「初午大祭」を開催しています。宮司の本田光曠さんによれば、この日は農耕民族の日本人にとって芽吹きの春を祝う日でもあり、命の根である「稲」の御神霊がお降りになる、稲荷童子の誕生のときでもあるのだとか。「古来から立春を迎える2月最初の午の日を一年中でもっとも気運の高い日と仰ぎ、この日に稲荷まいりを行うことを「福まいり」と呼ぶようになりました。今年の初午は2月4日。この日は祈りを書いた祈念木を線香で清め、赤いろうそくとともに神様にお供えします。」と本田さん。
深夜0時からはじまる初午まいりの「開運一番御座(かいうんいちばんござ)」に参拝するため、数時間前から列をなして待つ人も多いといいます。「開運御座は“神の御前に座して運を開く”という神事で、初午大祭に参詣される皆様のご幸運を祈念して行う新春縁起座です」。熊本城稲荷神社では、神殿内でお祓いを受けた後、今年の福男福娘(ふくおとこふくむすめ)による神酒大杯授与や開運福拍子、今年の縁起物を受ける開運福引きで新年の吉兆を祝います。日中は福餅まきや甘酒接待、獅子舞や踊りなどの奉納もあります。
同じく2月4日に「初午大祭」を行う熊本市の「高橋稲荷神社」では、日本舞踊や神楽の奉納、縁起物市などが催されます。また、旧暦の初午に合わせて行われる天草郡苓北町の「富岡稲荷神社」の「初午大祭(※)」では、蛇踊りや“しゃぎり”と呼ばれるフカ狩り音頭の披露などが予定されています。
(※富岡稲荷神社の初午大祭は3月12日に神事が、23日に奉納が行われます。詳しくは苓北町役場商工観光課TEL0969-35-1111(内線115)へお問い合わせください)

【写真(上段)】
熊本城稲荷神社の初午大祭の開運福拍子(左)。10~17時の間、1時間おきに計8回、開運福拍子や福餅まきが行われるほか、福を呼ぶ初午大太鼓や獅子舞、初午をどりの披露もあります。
【写真(下段)】
その年の福男福娘によって授与される「開運御宝(みたから)」。今年の幸運色である緑の袋に“ご縁魂(ごえんだま)”と“一粒万倍(いちりゅうまんばい)”のお米が一粒入っています。
【写真(上段)】
1月26日には、初午大祭のはじまりでもある「福迎え巡幸行列」が行われます。
【写真(左下)】
富岡稲荷神社の初午大祭では海辺独特の奉納もあります。
【写真(右下)】
「米には命の根である稲の御神霊が込め(コメ)られているため、私たちは感謝の意をこめて“お米”と呼びます。このお米をキツネ色の油揚げで包んだのが、いなり寿司です。初午ならではの食文化として、親しんでいただきたいですね。」とは本田さんの言葉です。