「人にも環境にも優しい」をモットーに 植物の持つ美や力を精一杯引き出す
[ #049 ]
#013
名残りの雪が降り、寒い日と暖かい日を繰り返しながら、やがて麗らかな春を迎えます。
春を待つ時期と、春の訪れの頃に咲く「花」にまつわる話をお届けします。
二十四節気では一年の始まり「立春」に入り、暦(こよみ)のうえでは春になりました。
名残りの雪が降り、寒い日と温かい日を繰り返す「三寒四温(さんかんしおん)」などを経て、やがて麗らかな春を迎えます。
その間、緑の若い芽吹きを見つけたり、春を告げる鳥のさえずりを聞きながら、春を想う冬の時期も楽しいもの。
今回は、春を待つ時期と春の訪れの頃に咲く「桃」と「桜」、その他の花にまつわる話をお届けします。
1年の間には5回の節句「五節句」があります。1月7日の人日(七草)の節句、3月3日の上巳(桃)の節句、5月5日の端午(菖蒲)の節句、7月7日の七夕(笹)の節句、9月9日の重陽(菊)の節句です。
古代から中国では奇数(陽)が重なる日は陰に転じやすい日とされ、その時期の植物の力を借りて邪気を祓う行事が行われていました。
3月3日の「上巳(じょうし)の節句」は「桃の節句」ともいいます。
中国では、桃は霊力が宿り邪気を祓う仙木・仙果であり、「百歳(ももとせ)」に通じる縁起の良い木とされてきました。3月上旬の巳の日の「上巳節」には桃の花を眺め、桃の花のお酒を飲み、桃の葉のお風呂に入ったといわれています。中国では現在もお祝い事には桃を象った「壽桃(しょうたお)/桃饅頭」を食べる風習があります。
また、古代中国では「上巳節」に水辺で邪気を祓う習慣がありました。それが平安時代に日本に伝わり、宮中行事として「曲水の宴」を行うようになり、紙・わら・草などで作った人形(ひとがた)に自分のけがれを移して流すようになりました(これが「流し雛」になったといわれています)。そして宮中や貴族の子供たちの間で行われていた紙人形遊び「ひいな遊び」(雛遊び)と結びつき、やがて江戸時代以降の「ひな祭り」に発展しました。
雛(ひな)祭りに欠かせない「菱餅(ひしもち)」は、上から桃色、白、緑色の3層に重なったお餅です。桃色(赤)は魔除け、白は子孫繁栄・長寿、緑は厄除け・健康などを意味し、願う色とされています。(菱餅は、黄色・赤色・橙色を加えた5色など、地域によって異なります)
市房山の稜線が背景に美しく霞む、標高350mの須恵地区松尾集落の茶畑。
澄んだ青い空に、鳥たちが嬉しそうにさえずる声が響きます。
20アールほどの茶畑の一角に、気持ちよさそうに枝を広げる「遠山桜」。
無農薬栽培の茶畑の中で、のびのびと育つ桜は、高さ6m、広さ15mほどに成長しました。4月上旬から中旬にほっこりと笑うように咲き誇り、見頃の時期を迎えます。
この桜は、昭和61(1986)年に茶畑の持ち主である遠山家が、もともとあった山桜に八重桜を接ぎ木して植樹したもの。その年は息子の遠山好勝(よしかつ)さんが結婚した年でもあり、桜はその記念樹になりました。
この地に咲く桜の風景が評判を呼び、見物や撮影に訪れる人が増えたため、遠山さんと仲間たちは多くの人に桜を楽しんでもらおうと「天空に咲く遠山桜まつり」を始めました。
祭りを始めて今年でちょうど10年を迎えます。
「今年も元気に咲いてくれるかな。訪れる皆さんは楽しんでくださるかな」。
開花の時期を前に、遠山さんと仲間たちの胸はワクワクと膨らみます。
【「第10回天空に咲く遠山桜まつり」(主催:遠山桜まつり実行委員会)】
開催日:4月11日(土)、12日(日)
※桜の開花状況によって、18日(土)・19日(日)に開催が変更になる場合もあります。
※2日間は許可車両以外は通行止めになります。
(あさぎり町須恵文化ホールから無料シャトルバスが運行されますので、そちらをご利用ください)
※4月1日~30日の車両通行は一方通行になります。
※4月1日~30日は夜桜のライトアップが行われます。
問合せ:あさぎり町役場商工観光課(直通)TEL0966‐45‐7220
旧細川藩の薬園だった「蕃滋園(ばんじえん)」の流れを汲む「熊本大学薬学部附属薬用資源エコフロンティアセンター」(熊本市中央区大江本町)。ここでは漢方薬の基礎研究や薬用植物の調査・研究などを行っています。およそ7,000㎡の標本園・樹木園の中で約1,000種の植物が管理されていて、一般の方も季節の木や花を楽しんだり、漢方・ハーブおよび薬用植物の勉強会に参加することができます。(事務局で入園受付が必要です)
この園のセンター長(准教授)を務める矢原正治さんを訪ねました。
「梅(1月下旬頃~)から始まり、杏(アンズ)(3月中旬頃~)、桜(3月中旬頃~)、桃(4月上旬~中旬)の順に開花します。日本で確認されている桜の品種は300種以上あります。桜は気温差が大きくなると開花しやすくなるため、秋などにも花を咲かせることがあります。また、1月下旬から2月上旬にかけての寒い時期に下に向いて花を咲かせる“ヒカンザクラ”などもありますよ」と矢原さん。
矢原さんは、園内に咲く季節の花や樹木、見学会で出かけた里山の山野草などの写真を撮り続け、身体を気遣う文章とともにメールマガジンなどで発信しています。その便りは新しい季節の訪れと、こよみと自然に寄り添って生きることの大切さを教えてくれます。
【熊本大学薬学部附属薬用資源エコフロンティアセンター】
所在地:熊本市中央区大江本町5-1
http://www.pharm.kumamoto-u.ac.jp/yakusoen/garden.html(別窓リンク)
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