#020

実りの秋と、深秋の気配を愉しむ「処暑」と「白露」の頃。

「熊本の秋は短いから」と挨拶が交わされる頃、新米の便りが次々と届きます。
「新米に合う常備菜レシピ」、球磨郡あさぎり町で秋に収穫される「和綿」の製品、
秋の風物詩「ススキ」に関する話題をお届けします。

二十四節気では暑さが和らぐ「処暑」。まだ夏の名残りを感じる頃、自然界では春に蒔いた種や稲が成長し実を結び、収穫の秋を迎えます。
そして、続く「白露」。この時期の熊本では「随兵寒合(ずいびょうがんや)」という季節の言葉の通り、藤崎八旛宮の秋季例大祭を境に、朝晩めっきり冷え込むようになります。
少しずつ秋が深まるこの時期、県内で次々に出荷される「新米」に合う旬の食材を使った「常備菜レシピ」、球磨郡あさぎり町で収穫が始まる「和綿」を使った製品、秋の七草の一つであり、晩秋の阿蘇の風物詩「ススキ」のお話をお届けします。

新米が更に美味しくなる
県産食材でつくる常備菜レシピ
早期米の栽培が盛んな天草では8月上旬から、「天草コシヒカリ」出荷がスタート。これから10月下旬にかけて、県内各地で続々と新米が出荷されます。今回、「くまもと手しごと研究所」熊本市エリア・キュレーターの木下真弓さんに、新米をおいしく味わえる「常備菜」をご紹介いただきました。
地域の人々の絆も紡ぐ
あさぎり町の「和綿(わめん)」
「処暑」の初候“綿柎開(わたのはなしべひらく)”は、綿を包む咢(がく)が開く初秋の時期。球磨郡あさぎり町須恵で無農薬栽培を行っている「和綿(わめん)」は、秋から収穫の時期に入ります。須恵の縫製工場「マインド熊本」を訪ね、安全安心の和綿を使った、ストール、ジャケット、ベビー用品等の製品を見せていただきました。
秋の七草の一つ
「尾花」(ススキ)
中秋の名月に、ススキをお供えする理由
奈良時代を代表する歌人・山上憶良(やまのうえのおくら)が詠んだ歌に登場する7種の草花が、「秋の七草」のはじまりとされています。晩秋の阿蘇の草原は、9月から11月上旬にかけて、徐々に変化していくススキの風景が楽しめます。中秋の名月になぜススキをお供えするのか、その理由もご紹介します。

新米がさらに美味しくなる

県産食材でつくる常備菜レシピ

温暖な気候の天草地方では、早期米の栽培が盛んに行われています。7月下旬頃には各地で稲刈りが始まり、8月上旬が収穫の最盛期。天草市瀬戸町にある「JA直売天草とれたて市場」では今年も8月5日から、平成27年産天草地域早期米の販売が始まっています。熊本県内ではこれから10月下旬にかけて、あちらこちらの産地から、新米の便りが届きます。
そこで今回は、「くまもと手しごと研究所」熊本市エリアキュレーターでエディター・ライターの木下真弓さんに、新米をおいしく味わう常備菜4品のレシピをご紹介いただきました。
家族の健康や食育を考え、熊本県産食材を使ったお弁当や食事づくりをモットーとする木下さん。取材に出かけた先々で物産館や直売所に立ち寄り、その土地ならではの食材を見つけては、日持ちのする常備菜を作りおきしています。旬の食材はもちろん、普段スーパーに並ばない、珍しい食材に出会えることも多く、熊本の食材の豊かさに驚くことが多いそう。そうした食材を積極的に取り入れることで、作る時も食べる時も飽きがこず、食事の満足度も高くなるそうです。
今回使った食材は、どれも県内各地の農産物直売所や生産者のもとで購入したもの。ぜひ皆さんも熊本県産の食材で作ってみてくださいね。

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【写真(左)】
「天草産コシヒカリ」の新米。
【写真(右)】
熊本県産の新米を県産の塩で握るおむすびの味わいは何よりのご馳走。
県産肉と赤酒でつくる肉味噌。ごはんもお酒も進む
くまもと肉みそ

【材料】(4人分)
・牛の肩ロース切り落とし200g
(今回は菊池の「えこめ牛」を使用。豚・鶏・牛などお好みのひき肉で代用可)
・白ネギ1本、ニンニク1片
・味噌100g
・赤酒大さじ4
・醤油大さじ2〜3(お好みの分量で)
・黒砂糖大さじ2、菜種油大さじ2

作り方
白ネギとニンニクをみじん切りにする。
肩ロース切り落とし肉を細かく叩く(肉の食感がないほうが好みの場合は、ひき肉がおすすめ)。
フライパンにゴマ油と❶のニンニクを入れ、弱火でじっくりと炒める。香りがしてきたらネギを入れ、さらに❷の肉を加えて火が通るまで中火で炒める。
❸に赤酒、黒砂糖、醤油、味噌の順に混ぜながら加え、焦げないように炒めながら水気がなくなるまで煮詰めていく。
天草のイリコと天水の天然ハチミツ。おやつやお茶請けにも
カリカリいりこ

【材料】(4人分)
・キビナゴイリコ80g(食べる煮干し)
・ハチミツ大さじ3〜4
・赤酒大さじ5
・醤油大さじ4
・煎りゴマ適宜

作り方
ボウルに赤酒と醤油を合わせておく。
キビナゴイリコをフライパンに入れ、カリカリになるまで弱火でから煎りし、バットに取り出す。
フライパンに❶とハチミツを加え、フツフツと気泡が出て少しとろみが出てきたら❷を加えてよく絡ませる。汁気がなくなったら、最後に煎りゴマを混ぜて完成。
お好みで辛みをプラス。冷や奴のトッピングにも
県産きのこの佃煮

【材料】(4人分)
・原木シイタケ6個
・ヒラタケ200g
・赤酒大さじ2
・みりん大さじ1
・黒砂糖大さじ1/2
・醤油大さじ2
・お好みでラー油かトウガラシ

作り方
シイタケは石突き(軸の先)を切り落とし、笠と軸を薄切りにする。ヒラタケは石突きを切り落とし、ほぐしておく。
フライパンに❶と赤酒、みりん、黒砂糖、醤油を加えて中火にかけ、炒め煮する。
キノコがしんなりとし、汁気がなくなったらお好みでラー油やトウガラシを加えてできあがり。
脂の乗った秋の真鯛をほんのり甘く
真鯛のみりん干し

【材料】(4人分)
・真鯛の切り身4切れ
(アジやサバなど、その時期の魚で代用可)
・本みりん
・酒
・薄口醤油各適宜
・煎りゴマ適宜

作り方
バットに真鯛の切り身を並べ、本みりん:酒:薄口醤油=1:1:2程度の割合で混ぜ合わせたものを入れる(切り身がひたひたに浸かるくらいが目安)。
❶にラップをし、冷蔵庫で2〜3時間寝かせる(しっかりした味付けがお好みの場合は一晩寝かせる)。
❷から真鯛を取り出し、身のほうを上にして煎りゴマをふる。
❸を干し網の中に並べ、風通しのいいところで3〜4時間ほど天日干しにする(干す時間は、季節や天候、お好みの干し加減で調整)。
焦げないように気をつけながら、両面を焼く。

地域の人々の絆も紡ぐ

あさぎり町の「和綿(わめん)」

「処暑」の初候“綿柎開(わたのはなしべひらく)”は、綿を包む咢(がく)が開く初秋の時期を指します。春に種を蒔き、秋になると白い実がパンとはじけ始め、9月下旬から翌1月にかけて収穫の時期を迎える「和綿」。かつての日本には、畑で綿を育て、糸を紡ぎ、機織りをする風景が日常にありました。近年、外国産の綿に押されて「和綿」が姿を消しつつある中、球磨郡あさぎり町では地域で連携し、和綿づくりに取り組んでいます。
球磨郡あさぎり町須恵の縫製工場「マインド熊本」は、安全なコットンを求めて、無農薬の和綿栽培から行う和綿づくりを2010年春から始めました。
収穫した綿は、「綿繰(く)り機」を使って種子と殻を取り除きます。この作業を、近所にある福祉施設や介護施設にリハビリや就労支援の一部として依頼したことをきっかけに、小学校では種蒔きや収穫の体験を、そして高校は綿繰り機の機械化の開発に着手するなど、この「マインド熊本」の試みを地域の住民が支援する動きが出始めたのです。2012年には、地域の小学校、高校、老人クラブなどが参加する「和綿の里づくり会」が発足。会では町のさまざまな世代が、畑おこし、種蒔き、収穫、綿繰りなどの工程に携わりながら交流を深め、その輪は町外にも広がっています。
約1,500㎡の土地で採れる和綿はおよそ50kg。あさぎり町の多くの人の手によって育てられた安全安心の無農薬和綿は、ストール、ジャケット、マスク、タオル、布ナプキン、ベビー用品等の製品として販売されています。

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球磨郡あさぎり町産・無農薬栽培の和綿。「洋綿は上に向かって実を付けますが、和綿は下向きに実を付けます。雨は殻を伝って落ち、綿の実を水分から守るなど、和綿は雨が多い日本の風土に合った品種といえます」と、和綿の栽培と製品作りを手掛ける「マインド熊本」代表取締役・恒松法子さん。
※(写真・右)「マインド熊本」様よりお借りしました。
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球磨郡あさぎり町の「マインド熊本」は、1989年に岐阜の縫製会社「マインド松井」の須恵工場として創業を始め、1996年に子会社として独立。工場は廃校になった小学校の校舎を使用している。タオル、ストールなどの製品として販売しているが、今後は綿糸や天然素材で染めた綿糸などを洋服やインテリア素材として販売することも検討しているとか。
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【写真(上)】
和綿の生地はフワフワとしたカシミヤのような手触り。帽子、スタイ(よだれかけ)、レッグウォーマー、肌洗い用のミニタオルなどベビー用品も人気だ。
【写真(下・左)】
肌触りの良さから、マスク、洗顔用タオル、布ナプキンなども女性に支持されている。
【写真(下・右)】
茜、ビワ、刈安(かりやす:イネ科の多年草)、紫根(しこん)などの天然染料で染めたタオルや衣類などもある。
■有限会社マインド熊本
所在地:球磨郡あさぎり町1092
問合せ:TEL 0966-45-4455

秋の七草の一つ「尾花」(ススキ)

中秋の名月に、ススキをお供えする理由

「萩(はぎ)が花、尾花(おばな)、葛(くず)花、撫子(なでしこ)の花、女郎花(おみなえし)、また藤袴(ふじばかま)、朝顔(あさがお)の花」
この歌は、奈良時代を代表する歌人・山上憶良(やまのうえのおくら)が詠んだもので、万葉集に収められています。この歌に登場する7種の草花が「秋の七草」のはじまりとされています。春の七草は食べて無病息災を願うもので、秋の七草は眺めて楽しむものとされてきました。
秋の七草の一つ「尾花」はススキ。ススキ(芒/薄)は「茅(かや:屋根を葺く草の総称)」とも呼ばれ、その茎葉は茅葺屋根の材料としても使われてきました。中秋の名月(2015年は9月27日)には、収穫に感謝し、月見団子などとともにススキをお供えします。ススキをお供えする理由は、古来よりススキが神の「依り代(よりしろ:宿るところ)」と考えられていたこと、繁殖力が高いススキの生命力に対し人々が子孫繁栄や健康などへの願いを込めたことなどが挙げられます。また、ススキを実る前の稲穂に見立てたともいわれます。
晩秋の阿蘇の草原は一帯がフワフワとした絹色のススキに覆われ、9月から11月上旬にかけて、徐々に変化していくススキの風景が楽しめます。

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米塚(阿蘇市)付近の秋のススキの風景。
※写真は「くまもと手しごと研究所」阿蘇エリア・キュレーターの荒木博さんよりご提供いただきました。
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阿蘇ミルクロード(県道399号北外輪山大津線)「かぶと岩展望所」(阿蘇市西小園)付近のススキの様子(2013年10月末に撮影)。
※秋には「すすきの迷路」が開催され多くの人で賑わうが、2015年の公開は未定。

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