ページ内移動リンク

ディレクトリ・ナビゲーション
細川亜衣さん
Vol.11

料理家 細川亜衣さん インタビュー

PROFILE

細川亜衣ほそかわ あい

1972年生まれ。大学卒業後、イタリアに渡り、帰国後に東京で料理教室を主宰し、料理家として活動。2009年9月、結婚を機に夫(陶芸家・細川護光氏)の故郷である熊本に移り住む。自宅がある熊本市中央区黒髪の「泰勝寺」で、生産者・料理人(提供する側)と消費者(食べる側)をつなぐマーケットや料理教室を料理教室などを開催している。熊本市内で月に4~5回開いている料理教室「camellia(カメリア)」では、熊本の旬の食材を使った洋風料理を提案。著書に「食記帖」(リトル・モア)「イタリア料理の本」(アノニマスタジオ)「わたしのイタリア料理」(柴田書店)「スープ」(リトル・モア)「愛しの皿」(筑摩書房)ほか。
※「イタリア料理の本」「わたしのイタリア料理」の著者名は旧姓の米沢亜衣。

※細川亜衣さん:以下 細川、くまもと手しごと研究所:以下 事務局

四季がタイムリーに感じられる熊本の生活。
熊本の野菜は大らかで濃い味がします。

事務局:
結婚を機に移り住んだ熊本の生活の中で、日々どんなことを感じられますか?
細川:
2009年9月に熊本に来てから6年になります。泰勝寺の中にある自宅は季節の木々や花に囲まれているので、春が近くなるとフキノトウが芽吹いたり、秋はモミジの葉が色づいたり…と、生活の中でタイムリーに四季の移ろいを感じています。
事務局:
熊本産の野菜や果物などからどんな印象を受けられましたか?
細川:
食材は主に生産者直売所で購入しています。魚は信頼のおける魚屋さんで、野菜は有機農家から宅配で頼むことも多いですが、熊本の野菜は大らかで濃い味がします。春の青い豆類、葉もの、トマト、なす、にんにく、いも類などがとても美味しいと感じています。
事務局:
興味を抱いたり、使ってみたいと思われる熊本の工芸品はありますか?
細川:
八代の竹細工の籠など、とても美しいと思います。ぜひディスプレイ等にも使ってみたいですね。
「泰勝寺」の門から奥へと続く風景。
紅葉の名所でもある「泰勝寺」。木々の葉や実が紅く色づき始めていた。

主宰する「マーケット」は、提供する側と食べる人をつなぐことが目的。

事務局:
現在、泰勝寺で熊本県内の生産者の方や料理やお菓子、パンなどの作り手が出店する「マーケット」を開催されていますが、そのきっかけを教えてください。
細川:
昨年春からKAB(熊本朝日放送)の番組「つながるひとさら~細川亜衣の食日記~」で、月に1回生産者の方を訪ね、食材が持つ物語からイメージしたひとさら(料理)を作るという企画に参加しています。マーケットの主旨は、その企画で知り合った生産者の方や、料理人、料理教室を開かれている方(提供する側)と、食べる人(消費者)を、熊本の食材をテーマに“つなぐ”こと。マーケットを訪れる方々に、提供する側の食材や料理を食べてもらうことで、消費者にリピートしてもらうことや関わる人たちがコミュニケーションを続けるきっかけを作ることが目的です。2014年6月からこれまでに「お菓子」「春」「お茶」「パン」「お茶と山の味」「クリスマスマーケット」「夜のスパイス&ハーブ」「栗」をテーマに8回開催しました。マーケットの出展には、必ず熊本県外の方にも参加していただき、熊本と県外の人がつながることも意識しています。
【写真(上)】【写真(左・下)】
2015年9月26日に泰勝寺で開催された「栗のマーケット」の風景。
【写真(右・下)】
季節の果物で氷蜜を作る渡辺薫子さん(熊本)の栗蜜を使った“SWAN”のかき氷の出展ブースに行列ができていた。
9月に出展していた、球磨郡錦町で桃・栗・柿を育てている「賀久(かく)農園」。栗の簡単な茹で方などを丁寧に教えてくれた。教えていただいた通りに茹でた栗・筑波(つくば)はホクホクと甘くて絶品!

2016年夏に発行予定の野菜料理の実用書では、全てのレシピに熊本県産の野菜を使っています。

事務局:
その他の活動について教えてください。
細川:
熊本市内で月に4~5回料理教室「camellia(カメリア)」を開催しています。参加者は毎回定員12名程度で募集しています。熊本の時期の食材を使った前菜・パスタ・メイン・デザートなど月替わりの料理4~5品を作ります。後で美味しく再現していただくための、大切なポイントを伝えるデモンストレーション(実演)がメインです。また、泰勝寺山門下の藤棚の下にある小屋「wistaria(ウィスタリア)※ラテン語で“藤”」では主に水曜日にパンや料理の販売なども行っています。マーケット、料理教室、ウィスタリアの情報はブログで紹介・募集していますので、興味のある方はそちらをご覧ください。
(細川亜衣ブログhttp://aihosokawa.jugem.jp/)
事務局:
細川さんが結婚を機に熊本に移り住まれ、出合った料理や季節の野菜についてのお話とレシピが掲載された「食記帖」などの著書がありますが、今後、熊本にまつわるレシピ本の発行予定はおありでしょうか。
細川:
2016年夏(予定)に四季の野菜料理の実用書を発行予定です。私は今住んでいる土地の野菜を使った料理を作ることがあるべき姿だと思っていますので、準備中の本に掲載するレシピには、多くの熊本県産野菜を使用する予定です。
泰勝寺のご自宅のキッチンにて。柑橘やトマトを入れたオリーブの木の器は細川さんのお気に入りの一つ。

季節の野菜を使い、塩と酒で味を調えた「だご汁」をよく作ります。

事務局:
5歳のお嬢さんに、お正月、節句などの行事の料理をどのように伝えていらっしゃいますか?
細川:
お雛祭りの時にちらし寿司などを作りますが、娘は食べないこともあります。でも大人になった時に「母がいつも作っていた」と、行事と料理のことを思い出してくれたらいいなと思います。娘には赤ちゃんの頃から大人と同じものを食べさせています。そのことで味覚の幅が広がれば…と考えています。
事務局:
熊本の郷土料理でよく作られるものはありますか?
細川:
「だご汁」を時々作ります。だご汁、と言っても、春はタケノコやアスパラ、秋は栗やキノコなどを具に使い、いりこと昆布でとった出汁を塩と酒で味を調えるものです。ちなみに南イタリアにも「ストラッシナーティ」という、“引きずった”“のばした”という意味のパスタがありますので、うちでは洋風のだご風料理をよく作ります。
事務局:
熊本で受け継がれてきた地域の料理や食文化を継承する、ということについて、感じられることがあれば教えてください。
細川:
熊本は食材が豊富で魅力的な生産者が多い地域だと思います。地域で受け継がれてきた料理や食文化は知る機会がないと廃れてしまいます。飲食店や学校などで食べる機会を増やし、その存在を知る機会を作ることが、継承することにつながるのではないでしょうか。
マーケットのスタッフと談笑する細川さん。マーケットは出展している生産者・料理人と訪れた人のコミュニケーションが、次につながることを目的としたもの。細川さんもスタッフや出展者、来場者との会話とコミュニケーションを大切にしている。
ここから共通フッター