Vol.12

雑貨店オーナー 寺本美香さん インタビュー

PROFILE

寺本美香てらもと みか

1979年、八代市で生まれる。
福岡の「西南学院大学 国際文化学部」を卒業後、北京に1年間留学。
帰熊後、雑貨メーカー直営店や個人経営の雑貨店に計8年間務めた後、独立。平成26年4月、八代をはじめ、熊本県内、全国の工芸品や特産品を使用した雑貨を扱う「暮らしの雑貨とカフェ KoKIN’(コキン)」を八代市松江町に開店。
https://www.facebook.com/kokinzakka/

※寺本美香さん:以下 寺本 くまもと手しごと研究所:以下 事務局

八代を訪れたり離れたりする方にも、八代のことを思い出していただける雑貨店になりたい。

事務局:
2年前にオープンした店舗は、どんなコンセプトなのでしょうか。熊本県の工芸や特産を使った雑貨も多く扱っていらっしゃると聞きました。
寺本:
対象は八代在住の人ですが、八代を訪れたり離れたりする方にも八代のことを思い出していただけるような雑貨を扱う店になりたいと考えています。現在、八代のものでは、晩白柚の入浴剤、宮地手漉き和紙を使った雑貨、妙見祭などをモチーフにしたマスキングテープ、竹の箸などを扱っています。その他、県内のものでは、阿蘇の酒蔵の酒粕やミルクを使った石鹸、山鹿の菊鹿ワインを使ったボディローション、天草の調味料・ジャム、陶磁器などがあります。今後、九州や熊本の商品セレクトを増やし、熊本らしさ、九州らしさを出していけたら…と考えています。
事務局:
そもそも、なぜ「雑貨」の道に進むことになったのか、そのきっかけをおしえてください。
寺本:
大学を卒業後、北京に留学したのですが、1年ほど経った頃、SARSが世界的に流行した影響で大学の授業のほとんどが受講できなくなってしまったんです。そのため八代に戻り、福岡に本社を持ち九州内外で雑貨メーカー直営店を経営する会社に就職しました。「とりあえず早く仕事に就かなくては…」という気持ちで選んだ業種でしたが、学生時代からの友達には「そういえば前から雑貨が好きだったね」と言われ、改めて雑貨が好きだったことに気づいたんです(笑)。会社はフレンチ・カントリーテイストの雑貨を扱い、20~40歳代の女性客を対象としたチェーン展開をしていました。働き始めて半年で店長の職に就き、その後は新店で店舗設営・スタッフ指導・販売応援などを担当しました。そこで勤務した5年間と、その後に3年間勤めた個人経営店での経験を通して雑貨店の運営に関わることや接客など、多くのことを学びました。
かつて電気店と倉庫、住居だった場所を姉妹で改装。雑貨店に併設するカフェで提供するタイ料理やスイーツなどは、お姉さんの西田由紀さんが担当。
「季節の花を飾ったり、植物を育てたり…日々の暮らしを大切にしている姉に支えられています」と寺本さん。トイレのドアのペイントなどを手掛けたのも西田さん。実家にあったという戸棚などもカフェ内のインテリアとして使われている。

「誰が見てもお洒落だと思うデザイン・現代の感性」と、「伝統の技術」が生かされ、融合している商品との出合いがありました。

事務局:
なぜ、自分の雑貨店を開こうと思ったのですか。
寺本:

チェーン店ではどの店でも同じ商品が手に入るのですが、残念ながら暮らしている「土地らしさ」が感じられるものはありませんでした。雑貨の世界で働き始めて5年以上経ってから「住んでいる地域でしかできない暮らしのスタイルがある。そのライフスタイルを提案できるような雑貨店を持ちたい」と強く思うようになりました。
その背景に、様々な雑貨(工芸)との出合いがありました。その一つは奈良で享保元年に創業した「中川政七商店」の麻織物です。享保元創業し、手績(う)み手織りの麻織物を扱いながら、「日本の工芸を元気にする」というテーマでブランドづくりを行っている会社です。もう一つはその会社がブランディングを手掛けた、長崎県波佐見町(はさみちょう)の「HASAMI」(有限会社マルヒロ)という陶磁器でした。「中川政七商店」と「HASAMI」の共通点は、「誰が見てもお洒落だと思うデザイン・現代の感性」と、「伝統の技術」が商品の中に生かされ、融合していることです。

■中川政七商店ホームページ
http://www.yu-nakagawa.co.jp/
■「HASAMI」
http://www.hasamiyaki.jp/hasami/

寺本さんが「伝統の絵柄や技術と、現在の感性が融合した雑貨」と例に挙げる「中川政七商店」(奈良)。この豆紋ふきんに使われているように「赤色ではなく朱という“色”にも日本らしさを感じます。色は民族性が表れるものの一つだと思います」と寺本さん。

伝えたいのは、その土地に根ざした「豊かな暮らしのスタイル」と、
丁寧に暮らすことがもたらす「心の豊かさ」

事務局:
寺本さんの店舗では熊本県以外の全国の工芸品も扱っていらっしゃいますが、商品はどのようにセレクトされているのでしょうか。
寺本:
メーカーが出展する中央の大きな展示会に出かけたり、「キナリノ」「暮らしの道具 日和」など全国の工芸品を扱うサイトで気になるものを探してその物語をたどり、その現場を訪れることもあります。仕入れる時には、存在感が際立っているか、使うシーンが頭に浮かぶか、お客さんにお勧めできる良い特徴があるかなどをチェックします。現場を訪れる機会や時間が限られているため、インターネットで工芸や作家さんの情報を探せることがとても助かります。SNSなどできちんと情報発信をすることが、新しい出会いにつながる時代であることを感じます。私もお客さんが店に来ていただいた時に接客中で詳しく説明できないことがあるため、扱う商品の情報をFacebookで詳しくUPするようにしています。
事務局:
寺本さんは「もの」によってどんなことを伝えたいと思われますか。
寺本:
「古今在家(こきんざっか)」という屋号は、昔と今がつながるライフスタイルを表現した(しようとしてる)私の造語で、事業理念でもあります。昔から続く風習や文化、そこから生まれたモノと今の私たちのライフスタイルや新しい感性、そこから生まれたモノ。それら全てが「在る」「家(=暮らし)」を提案したいのです。
流行のものをどんどん新しく買うのではなく、暮らしの中で役立つものを選び、捨てるのではなく最後まできちんと使い切ることによって、ものが真価を発揮するのだと思います。ものを通して、その土地に根ざした「豊かな暮らしのスタイル」と、丁寧に暮らすことがもたらす「心の豊かさ」を提案したいと考えています。
【写真(上)】
八代の宮地手漉き和紙を使った祝儀袋やポストカード、手描き友禅のガマ口やタペストリーなどの制作を手掛ける「はるかぜ工房」代表・吉田春香さんの作品。
【写真(下・左)】
八代を代表する伝統工芸品・竹細工。写真は「桑原竹細工店」の竹箸と、八代で作られているサイダー。「竹細工や宮地の手漉き和紙製品など八代の工芸品を、八代で暮らす人も“いいね”と買いにきてくださることが嬉しいです」と寺本さん。
【写真(下・右)】
八代の特産品であり世界最大の柑橘類「晩白柚(ばんぺいゆ)」の香りが楽しめる入浴剤。その果肉は爽やかな酸味と甘み、さくさくとした食感が特徴。八代地域では収穫時期(12月頃)になると湯船にまるごと浮かべて香りを楽しむ習慣がある。
【写真(左)】
阿蘇郡高森町に工房を持つ「Ladybug(レディバグ)」の石鹸。阿蘇の地酒「れいざん」の酒粕や、阿蘇「阿部牧場」の牛乳、八代「堀内油屋」の椿油などを使用している。
【写真(右)】
天草維和島で栽培されたオーガニックの農産物などを使用した「麻こころ茶屋」のモスタルダ(フルーツマスタードジャム)、グラノーラなど。
【写真(左)】
「熊本ワイン」の菊鹿ワインエキスをオーガニック素材にブレンドした、限定1000本のボディローション。
【写真(右)】
平成23年に国重要無形民俗文化財に指定された「妙見祭」や八代の特産品などをモチーフに使用した、オリジナルのマスキングテープも人気。
【写真(左)】
ぼたもちの皿と箸置きにした小皿は、天草で作陶を行う、木(しげ)ユウコさんの作品。
【写真(右)】
八代出身、東京在住の豊村一徹さんが手掛けるいぐさブランド「イグサンローラン」のテーブルセンター。(参考商品)