「生かす」「使い切る」。家具を通して豊かな暮らしを提案。
Vol.15

「生かす」「使い切る」。家具を通して豊かな暮らしを提案。

古島 隆さん  古島隆一さん インタビュー
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PROFILE

松村勝子さんの写真

古島 隆ふるしまたかし

1948(昭和23)年、八代郡氷川町生まれ。国立有明高専機械工学科卒業後、初代・古島武氏の下で木工の修業を始める。1986(昭和61)年、熊本県伝統的工芸品に指定。1990(平成2)年、「くらしの工芸展」(主催:熊本県伝統工芸館、熊本日日新聞社)でグランプリを獲得、1991(平成3年)年、「西部工芸展」入選など受賞歴多数。1999(平成11)年、熊本国体で来熊された天皇皇后両陛下が腰掛ける椅子を制作。
「有限会社フルシマ家具工芸/木工房ひのかわ」代表取締役社長(2代目)。

倉橋恭加さんの写真

古島隆一ふるしまりゅういち

1981(昭和56)年、八代郡氷川町生まれ。高校卒業後、飛騨高山家具製作学校へ進学。その後、大手家具メーカー、アンティーク家具修復会社勤務を経て帰熊し、2代目・古島隆氏に師事。2016(平成28)年「くらしの工芸展」入選。一級家具製作技能士、木工科職業訓練指導員。
「有限会社フルシマ家具工芸/木工房ひのかわ」3代目。

※古島隆さん:以下 、古島隆一さん:以下 隆一、くまもと手しごと研究所:以下 事務局

1日に何度も触れるものほど、無垢材の心地良さ、温かみ、
使い勝手の良さが実感できる。

事務局:
私たちは家具に囲まれて日々の生活を送っていますが、その素材については知らないことが多いように思います。
隆:
私たちは、ウォールナット、タモ、ブラックチェリー、サクラ、カエデ、ナラ、ケヤキ、センダン、イチョウなど50種類以上の木を使用しています。輸入材も一部使いますが、多くは樹齢数百年の丸太を市場などで仕入れ、製材したものを使います。人に個性があるように、同じ種類の木でもその1本1本が違います。また1本の木でも部分によって性質が異なります。私たちの家具作りは、丸太の状態から木の素性や性質を見て、硬さ、色、木目を読み、どんな家具のどんな部分に使えばより生かせるのかをイメージするところから始まります。丸太から切り出した自然な木材である「無垢の木」は、家具になっても生き続けます。梅雨時には湿気を吸って広がり、乾燥している時期には縮みます。冬も冷たくならず、金属と違って真夏の太陽の下でも触れられないほど熱くなることはありません。
隆一:
伸縮を予測し、木目を読んで作った家具や道具は、割れたりせず長期間良い状態を保つことができます。無垢材と合板(薄い木板を接着剤で貼り合わせたもの)の違いが良くわからないという方もいらっしゃるかもしれません。例えば、本革と合皮の違いが一見わかりにくくても、使っているうちにその質感の違いがわかってきます。また、本物は手直ししながら長く使うことができ、大切に使ううちに愛着が湧いてきます。無垢材の家具も同じように、テーブル、椅子、引き出しなど、1日に何度も触れるものほど心地よい質感や温かみ、使い勝手の良さを感じることができると思います。

こだわりの家具と共に、
愛着を持ってものを大事に使う姿勢も次の世代に受け継いでほしい。

事務局:
オーダー家具の製作と家具のリノベーション(修理・再生)を手掛けていらっしゃいますが、その背景にはどんな思いがあるのでしょうか。
隆:
明治時代後期以降、住宅の西洋化など建築様式の変化や技術の進化により、家具に対する意識も変わってきました。日本人の家具に対する意識は、住宅の変化や進化と密接な関わりがあります。
「丈夫で使い勝手が良く、美しい家具」を作ることが私たちの仕事のテーマです。良い素性の木を選び、適材適所を見極めて作る家具は、手入れをすることによって100年先の孫の代まで使えます。無垢材で作った家具は、表面が傷つけば削り、別の家具にするなどのリノベーションができますが、薄い板を貼り合わせた合板を使用している家具はそれができません。
人は「こだわり」があるものは大切に使います。こだわりのある家具と共に、愛着を持って「ものを大事に使う姿勢」、「使い切る精神」も次の世代に受け継いでほしいと思います。
昨年(平成28年)4月の熊本地震の後、オーダーを受けて家具を作ったお客さん全てに、家具の被害状況を尋ねるアンケートを送りました。家具にはめていたガラスが割れたというお客さんがいらっしゃいましたが、家具が倒れたり壊れたなどの被害はありませんでした。もともと無垢材の家具はどっしりと重いのが特徴ですが、改めてその耐震性の高さも再認識しました。日本の伝統技法である”送り蟻組(ありぐみ)”など釘を使わない接合工法によって、揺れや衝撃に強い家具であることも、被害を抑えることができた一因だと思います。
隆一:
完成した家具をお渡しすることが終了ではなく、そこからが本当のスタートです。テーブルに傷がついてしまったら削り、又は傷をデザインとして生かしたり、別の家具に作り変えたり…。とことん「使い切る」ことで生まれる、心豊かな暮らしを提案したいと考えています。

触れたり使うたびに「満足を感じ、満足が続くもの」。
心が豊かになる、そんな家具を手掛けていきたい。

事務局:
初の親子展「新しいカタチ 受け継ぐココロ」(2017年1月31日~2月5日/熊本県伝統工芸館)の会場で2代目・隆さんがおっしゃっていた、「そろそろ世代交代を考える時期」という言葉が印象に残りました。隆一さんは、師であり父の隆さんからどんなことを学び、引き継いでいこうと思っていらっしゃいますか。
隆一:
学校に通っていた時やアンティーク家具を修復する会社に勤めていた時に、木のことや家具を作る技法などは一通り勉強しました。しかし、現在家具を制作しながら、木の種類や1本1本の木の素性を読み、クセを見極めること、仕入れ、加工など無垢材について知らなかったことを学んでいる最中です。家具を作る上で最も大切で難しいことは、無数にある木材の中から家具に適した材料を選ぶ「木取り」という最初の工程です。今後、師匠である父と仕事をする時間の中で、自分にはまだまだ足りないその知識や経験を父からたくさん吸収したいと思っています。
私たちはアーティストではありません。初代と2代目から受け継いだ精神を大切にしながら、お客さんが求められるデザインやイメージに寄り添い形にして、生活の中で触れたり使うたびに「満足を感じ、満足が続く家具」を作り続けたいと思います。

■木工房 ひのかわ
所在地:八代郡氷川町宮原671-1
問合せ:0965‐62‐2133
URL:http://www.hinokawa.jp/

【写真(左)】
依頼を受けて2代目・隆さんが制作した、1999(平成11)年の熊本国体で天皇皇后両陛下が腰掛けられた椅子「ロイヤルチェアー」。
【写真(右)】
洋間に置いても違和感のない、モダンな仏壇。(2代目・隆さん作)
部屋の印象を全く変えてしまうような「オープンラック」(3代目・隆一さん作)。
お客さんが欲しいと思う家具を形にすることが前提だが、3代目・隆一さん自身が「こんなものがあったら面白いのでは?」と提案しているミニチュアシリーズ(写真上/右・左)と木製バッグ(写真下)。ミニチュアテーブルの上のカップ&ソーサーは、「器峰窯(きぼうがま)」(天草市本渡町)の岡部俊郎さん・綾子さん夫妻の作品。今後、異なる分野とのコラボレーションから生まれるアイデアや作品も楽しみ。
波状に加工した「木波チェスト」。ネコ脚を取り入れた、3代目・隆一さんによるデザイン。
「木工房ひのかわ」(八代郡氷川町)のショールームに隣接した工房にて。家具作りの加工や組み立てを行う際に欠かせない、独自に工夫された器具”治具(じぐ)”がずらりと並ぶ。