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#009

秋の名月を愉しみ、暦(こよみ)を想う

十五夜や十三夜など夜空を見上げることが増えるこの時季は、暦と、いにしえの暮らしを想うときでも あります。

今日は何の日?

05/28

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【二十四節気】
【七十二候】

暦(こよみ)と天文には、深い関わりがあります。
旧暦では、月の満ち欠けの一巡をひと月の単位に定めていました。
そこに、昼と夜の長さが同じになる「春分の日」「秋分の日」、昼が最も長い「夏至」、夜が最も長い「冬至」の4日を基準に1年を24に分けた「二十四節気」を取り入れることで、農作業や日々の暮らしの“ものさし”としました。
月の形で日々の移り変わりを計り、空の色や雲の様子を眺め風の変化を感じながら、自然と寄り添う暮らしを送ってきたのです。
秋の月や星空を眺めることが多くなるこれからの季節は、暦といにしえの日本人の暮らしを想う機会でもあります。

『くまもと手しごと研究所』上益城エリアの

キュレーター・折尾拓美さんによる、

「十五夜」と「秋の月と星」のお話

今年(平成26年)の「中秋の名月(十五夜)」は新暦の9月8日(月)です。中秋の名月とは、太陽太陰暦で8月15日の夜の月のことを言います。農業の行事と結びつき、「芋名月」と呼ばれることもあります。中秋の名月を行う習慣は、平安時代に中国から伝わったと言われています。月が見やすい時間帯は日没後1時間半ぐらいですから、20時頃以降がおすすめです。観賞は、ご自宅でも十分楽しめると思います。
満月は毎月起こる現象ですが、中秋の名月は別格です。満月の年もありますし、そうではない年もあります。現に今年は翌日(9月9日)が満月になります。毎年同じお月様が見られないところが魅力ではないでしょうか。特に秋のお月様は、空気が澄んでいるので綺麗に見えます。

古来より「十五夜」の日に月を鑑賞する風習がありました。昔から日本では秋に新穀の収穫が終わると、その新穀を神仏にお供えし感謝をする風習がありました。
私自身は、満月の翌日、十六夜の月(いざよいのつき)が好きです。十六夜の月は、まるで出てくるのをいざよっている(ためらっている)ように思えたことから付けられた呼び名です。他にも「立待月(たちまちづき・十七日月:日が沈んだ後、立って待っている間に出てくる月)」、「居待月(いまちづき・十八日月:月の出が遅れるため座って待つ月)」、「寝待月(ねまちづき・十九日月:月の出がますます遅くなるので寝て待つ月)」、「更待月(ふけまちづき・二十日月:夜が更けてから昇る月)」などがあり、月の満ち欠けによるお月様が出る時間帯を表しています。

最後に、月と星空の楽しみ方についてお話します。いつの季節もそうですが、星空は「光害」「月明かり」に左右されます。まず、「光害」のない海や山などに移動しましょう。出発前にはお天気確認を忘れずに‼その場所は360度空を見渡せますか? そして一番大事なのが月の出(月暦・時刻など)です。
満月前後は月明かりが強すぎて星が見にくいものです。おすすめは、新月から三日月までのお月様です。その頃は月明かりに邪魔されることなく満天の星空を楽しめます。また、(9月~11月)までは天の川観察に適しており、今年の秋の「皆既月食」観察は特におすすめです。皆既月食は10月8日(水)に全国で見られる現象ですが、満月のときに条件があわないと見ることができないので貴重です。満月のお月様が時間とともに赤胴色に変わっていく様は、まさに宇宙の神秘です‼ 当日、晴れますように…。

折尾さんのおすすめ観察3点セット

①レジャーシート 
寝そべって観察できるので長時間向き。人工衛星&流れ星も見やすいです。
②天体観測ライト+赤フィルム
ライトに赤フィルムを貼ると目を保護できます。
③双眼鏡
肉眼では見ることができない世界が広がります。

 

【写真(左)】
「満月」(平成19年9月22日に撮影)
【写真(右上)】
「秋の星空」(平成25年10月31日に撮影)。9月~11月は「天の川」観測のベストシーズンだ。
【写真(右下)】
「十六夜月と桜」(平成25年4月20日に撮影)。「十六夜(いざよい)月」は満月の翌日の月。十六夜の月は、まるで出てくるのをいざよっている(ためらっている)ように見えたことから名付けられた。
※撮影/折尾拓美さん

暦と月に関連するお話と情報

■「月の満ち欠け」とは?
月の満ち欠けは、地球の周囲を回る月と太陽の位置関係によって変化する現象です。
地球から月が全く見えなくなる「新月」(1日/朔:さく)から少しずつ満ちていき、15日前後に「満月」(望:ぼう)になります。それが過ぎると月は欠けていき、再び「新月」になります。


■「旧暦」と「新暦」について
月が新月から満月になり、また新月に戻るまでの周期は約29.5日です。それを1ヶ月の単位としたのが「旧暦」(陰暦:太陽太陰暦)です。現在も使われていますが、旧暦の1~12月の和風月名(睦月、如月、弥生…)は、日本書紀にも全く同じ読み方で記されています。
旧暦は354日(29.5日×12ヶ月)であるため、19年に7度の割合で閏月(うるうづき・じゅんげつ)を入れて、季節と月日のずれが大きくならないように調整していました。
「旧暦」が地球から見た月の動きを単位としたものであるのに対して、日本で1873(明治6)年に採用された「新暦」は、地球が太陽の周囲をまわる周期を1年とした太陽暦(グレゴリオ暦)です。新暦では1年の長さは365日と定義されていますが、現在の太陽暦では、地球が太陽の周りを回る周期は正確には365.24日であり、そのずれを調整するために4年に1度、2月の末日を1日増やす「閏日(うるうび:じゅんじつ)」を設けています。なお、次に閏日がある「閏年(うるうどし・じゅんねん)」は2016年です。


■旧暦を新暦に変換したい時…
旧暦を新暦に、また、新暦を旧暦に変換する際、西暦と年月を入力すると調べることができる便利なサイトがあります。
http://www.calc-site.com/calendars/old_calendar(別窓リンク)


■外国にも「お月見」はあるの?
中国では旧暦の8月15日に「中秋節(ちゅうしゅうせつ)」という行事があります。秋の収穫を神様に感謝し、ハスの花、スイカを供え、名月を眺めながら月餅(げっぺい)を食べます。
また、韓国では旧暦8月15日に「秋夕(チュソク)」という大きな行事があり、その前後1日ずつ(計3日間)は秋の収穫に感謝し、新酒や初物を供え、栗ごはんや里芋の澄まし汁、松餅(ソンピョン)などを作って食べ、先祖のお墓参りをするなどの習慣があります。



■県内で開催される「観月会」のお知らせ

【第十七回佐敷城跡観月会】

中秋の名月を愛でながら、狂言と薪能で幽玄の世界を堪能する会です。

平成26年9月9日(火)18:00~
会場:国史跡佐敷城跡二の丸広場 ※雨天の場合は、しろやまスカイドーム
料金:前売1,500円、当日2,000円(中学生以下無料)
内容:
●18:00~:開会行事(葦北鉄砲隊・雅楽演奏)
●18:30~:開会式、演目解説、火入れ式
●18:50~:薪能[演目/狂言「隠狸」(狂言みのる会)、能「俊成忠度」(喜多流喜秀会)]
●20:00頃:終了
●問合せ:芦北町教育委員会 生涯学習課文化振興係TEL0966‐87‐1171
※詳細は芦北町ホームページをご参照ください
http://www.ashikita-t.kumamoto-sgn.jp/www/contents/1314235492183/index.html(別窓リンク)



【平成26年度 熊本城「名月観賞の夕べ」】

旧暦8月15日の月「中秋の名月」に合わせて、熊本城内で野点、太鼓や筝の演奏などが実施されます。

平成26年9月7日(日) 18:00~20:30/9月8日(月) 18:00~20:00  ※2日間
会場:熊本城天守閣前広場、本丸御殿中庭 ※雨天時 櫻之間、闇り通路
内容:
●野点(東阿部流熊本支部):7日(16:00~20:00、先着300名、天守閣前広場)、8日(16:00~20:00、先着300名 天守閣前広場) ※雨天時は本丸御殿桜之間にて実施
●太鼓(代継太鼓保存会):7日(18:00~18:30、19:00~19:30、20:00~20:30 本丸御殿中庭)
※雨天時は本丸御殿闇り通路にて実施 
●箏(藤川いずみ社中):8日(18:00~20:00 本丸御殿桐之間)
●問合せ:熊本城総合事務所 お城まつり運営委員会事務局(担当:南)TEL096-328-2944



【第二回アスペクタ観月会~仲秋の名月とひやおろしの宴~】

昨年に引き続き、今年で第2回目となる催し。仲秋の名月と秋のお酒「ひやおろし」(熊本を代表する酒造メーカー「瑞鷹」「れいざん」「蓬莱」「花の香」「亀萬」の5蔵元が参加)を、ススキの名所でもある「アスペクタ」で音楽(Emerald Wind&錦戸洋之)と食と共に楽しむ野外イベントです。

平成26年9月14日(日) 16:00開場、21:00終宴 ※小雨決行
会場:熊本県野外劇場「アスペクタ」(阿蘇郡南阿蘇村久石)
料金:1,000円(税込、飲食代別)※枡販売を別途販売 (価格 ¥500)※2杯付き 
主催:アスペクタ観月会 実行委員会
問合せ:アスペクタ管理運営共同体TEL0967–67–1161



■秋の名月や星の観測ができる天文台の中から2つの施設をご紹介します

【清和高原天文台】

観測条件が整った場所にある天文台で、敷地内に宿泊施設やレストランがあります。

所在地:上益城郡山都町井無田1238‐14
電話:0967‐82‐3300
開館時間:14:00~22:00
観測時間:20:00~22:00(4月~11月)、19:00~22:00(12月~3月)
天候不良の場合は観測を中止する場合があります。
観測料:高校生以上500円、小・中学生300円
休館日:毎週火曜
ホームページ http://seiwabunraku.hinokuni-net.jp/tenmon/(別窓リンク)
フェイスブック https://www.facebook.com/seiwakougentenmondai(別窓リンク)
ツイッター https://twitter.com/astroseiwa(別窓リンク)
●平成26年9月の予定
・9月6日(土)
「中秋の名月ジャズコンサート」(上村正人アコースティックジャズコンサートと、お月見観測会)
※ジャズコンサート19:30~/お月見観測会21:00~22:00(雨天の場合の会場は清和物産館)
(料金は高校生以上2,000円※当日2,300円、中学生1,000円)


 

【熊本県民天文台】

毎週末、アマチュア天文家の楽しい解説で星空と宇宙を楽しむことができます。

所在地:熊本市南区城南町塚原2016
電話:0964‐28‐6060
公開日:毎週金曜・土曜・日曜の晴れた日の夜(19:00~22:00※受付は21:00まで)
URL http://www.kcao.jp/(別窓リンク) 
●平成26年9月~10月の予定(一般の方が参加できる観測会)              
・9/6(土)20:00~
「フィールドミュージアム へ とびだそう!~月を撮影しよう!~」(県民天文台で開催)
・9/19(金)19:30~
菊陽町コミュニティセンター主催「星空の魅力発見 観察会」(武蔵ヶ丘中グラウンドで開催)
・10/18(土)
熊本県環境センター主催「星の観察会」(水俣市の熊本県環境センターで開催)
・10/26日(日)10:00~15:00
「昼間の星を探そう!」(「火の君祭り実行委員会」主催の「火の君祭り」関連イベント/塚原古墳公園で開催)



「中秋の名月(十五夜)」と「十三夜」

十五夜は、もともと芋類の収穫を感謝しお供えしていたことから「芋名月」とも呼ばれています。もともと中国で行われていた月見の日に里芋を食べる収穫祭が宮廷行事となり、それが奈良時代から平安時代に日本に伝わったといわれています。
日本では、旧暦8月15日の「中秋の名月」だけでなく、旧暦9月13日(平成26年は10月6日)にも「十三夜」(「後(あと)」の月、「栗名月」、「豆名月」)に月見をする風習があります。「十三夜」はこれから月が満ちる縁起のいい月といわれ、十五夜に次いで美しいとされています。十五夜は中国から伝わったものですが、十三夜は秋の収穫を感謝し祝う、日本独特の風習です。
十五夜と十三夜は同じ場所で月見をするものとされ、十五夜だけに月見をするのは「片見月」と呼び、嫌われていました。曇りの夜空になることが多いといわれる「十五夜」に対し、十三夜は晴れることが多いといわれ、「十三夜に曇りなし」という言葉もあります。
9月の「十五夜」と10月「十三夜」、秋の2度のお月見を愉しみたいものです。

十五夜にお供えする「月見団子」の由来と作り方

十五夜には、太陽と同様に豊かな実りの象徴である月に、収穫を感謝し祝うものとして里芋や豆などをお供えしていましたが、やがて米を使った団子などもお供えするようになりました。月見団子は、収穫の感謝を月に伝えるためのものであり、物事の結実や健康、幸福を表しているともいわれます。
月見団子の作り方と供え方を、「欧風創作菓子 メゾン・ド・キタガワ」のオーナーパティシエ・北川博喜さん(「くまもと手しごと研究所」熊本市エリア・キュレーター)に伺いました。
北川さんは18歳から3年間、東京都練馬区の老舗和菓子店で和菓子作りを修業。お茶席用の上生菓子や朝生菓子を作りながら、日本の四季とお菓子の関係、季節の移り変わり、繊細な色彩表現などを学びました。
「月見団子の形は満ちる月を表現していますが、真ん丸ではなく、少しだけつぶして仕上げます。その理由は、死者の枕元に供える“枕だんご”の形が真ん丸であることから、それと区別をするためです。今は上新粉などを使いますが、以前は里芋を練り込むなどして作っていたようです。また、里芋の形に模したお団子にのばしたこしあんをのせて、雲がかかった月を模す地域もあります。以前私が修業をしていた東京都練馬区では、薄桃色、よもぎ色、白色のちぎったお団子をこしあんで和えたものが月見団子として食べられていました」と北川さん。
今年の十五夜には、手作りの月見団子を月にお供えしてみませんか?

【写真(左上)】
「十五夜」(芋名月)に供える「月見団子」。月が出てくる方角に、萩やススキなど秋の草花、里芋やサツマイモ、御神酒などと共に供える。
【写真(右上)】
お供えの月見団子を作って下さった「欧風創作菓子 メゾン・ド・キタガワ」(熊本市南区田迎)オーナーパティシエの北川博喜さん。和菓子の修業経験があり、暦とお菓子の関わり、季節感、繊細な色彩感覚が、美味しい洋菓子やチョコレート作りに生かされている。
【写真(左下)】
熊本の和菓子店で販売されている月見団子は「串団子」が一般的。(熊本市南区川尻「天明堂」)
【写真(中央下)】
9月23日は「秋分の日」。秋のお彼岸に供える「おはぎ」は秋の七草の一つ“萩(はぎ)”に由来する。粒を残した“半殺し”といわれるお餅をあんこでくるんだお菓子だが、このおはぎは、春のお彼岸になると「ぼたもち」(春の花“ぼたん”に由来)と呼称が変わる。
【写真(右下)】
秋の七草の一つ「萩(はぎ)」。(撮影:くまもと手しごと研究所・上益城エリアキュレーター・山本紀子さん)

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