#010

秋の菊。愛でて食して、風情にひたる。

日暮れが早くなるにつれ、菊のつぼみがふくらみ始めます。菊は本来、秋の訪れを告げる花でもあるの です。

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二十四節気「寒露」(10月8日~22日)は、秋の長雨が終わり、草木に冷たい露が落ち始める頃を指します。山では紅葉が始まり、あかね色の空の下、澄んだ虫の声が響きわたります。日暮れが早くなるにつれ、ギュッと固く丸まっていた秋菊のつぼみもふっくらとふくらみ始めました。「寒露」の次候にあたる10月13日〜17日は、旧暦で「菊花開(きっかひらく)」と呼ばれています。菊花のつぼみがほころび、のびやかに花弁を伸ばしていくさまは、深まりゆく日本の秋を知らせるものでもあるのです。
今回は「菊」をテーマに、季節や熊本とのつながり、ガーデニングやフラワーアレンジメントなどめでる楽しみ、更には「食」としての菊の味わいなど、様々な「菊」の魅力をご紹介します。

「菊花開」「重陽の節句」の章

「重陽の節句」と菊とのつながり

旧暦9月9日は五節句のひとつ「重陽の節句(ちょうようのせっく)」で、別名「菊の節句」とも呼ばれます。中国から伝わった重陽の考え方に基づき、日本でも平安時代くらいから邪気を払い、長寿を願う祝いの日として親しまれるようになりました。宮中で、菊の花びらを浮かべた菊酒を酌み交わしたり、菊の花を愛でるなどの行事が始まったのもこの頃からだといわれています。
夏菊や電照菊などが登場し、今でこそ菊は年中見かける花になりましたが、本来は秋の花です。一年の終わりの時期に花を咲かせる植物で、寒い時期に霜にあたっても、春には新芽が芽吹くことなどが「不老長寿」の象徴とされる理由のひとつでしょう。平安時代の貴族の間では重陽の節句の前日に、真綿で菊を覆って夜露と花の香りをうつし、翌朝、その綿で体を拭いて若さと長寿を願うという習慣があったそう。秋の和菓子としてつくられる「菊の着せ綿」は、その名残でもあります。

【写真(左)】
菊池市の橋本さんの大菊。
【写真(中央)】
赤と黄のリバーシブルで落ち着いた色合いも魅力の「フエゴダーク」。
【写真(右)】
菊の香りをうつした「菊酒」。重陽の節句には、これを飲んで邪気を払い、長寿を願う風習があった。
「熊本と菊」の章

江戸から受け継がれる熊本城の「肥後菊」

奈良時代、中国から薬草として渡来したのが日本における菊文化のはじまりといわれます。その後、菊を愛でる文化が浸透し、江戸時代に入ると各地で菊の品種改良が行われるようになりました。個性あふれる地方菊が栽培されるようになったのもこの頃です。細川家8代重賢(しげかた)の時に、武士のたしなみとして始まった「肥後六花(ひごろっか」は、門外不出として現在に伝えられています。6つの花は、「肥後椿(2月下旬~4月上旬)」、「肥後芍薬(しゃくやく)」(4月下旬~5月上旬)、肥後花菖蒲(はなしょうぶ)」(5月下旬~6月上旬)、「肥後朝顔」(8月上旬)、「肥後山茶花」(11月~12月)、そして「肥後菊」(11月中旬~12月上旬)です。熊本城竹の丸には肥後名花園があり、各々の開花の時期に楽しむことができます。「肥後菊」は、江戸菊や伊勢菊、佐賀菊などと並ぶ、日本古典菊の代表ともいわれます。
一重咲きで、花びらと花びらのあいだにすき間があり、紅・白・黄色の3色をベースとしたあざやかな花色を誇るのが、「肥後菊」の特徴です。後列に背の高い大輪を、中列に中輪を、前列に小輪を、さらに花弁の形が異なるものを交互に植えるなどの法則で花壇に直植えし、全体の調和の美しさを鑑賞するという独特のスタイル。熊本城の竹之丸に設けられた「肥後六花園」では11月中旬から下旬にかけ、約70種の肥後菊を愛でることができます。

※現在は熊本地震からの復旧のため熊本城及び竹之丸は入城できません。1日も早い復旧を願っています。

【写真(左)】
紅・白・黄色の3色をベースとしたあざやかな花色を誇る肥後菊は、肥後六花のひとつ。
※写真は「熊本城総合事務所」からお借りしました。
【写真(右)】
11月中旬から下旬にかけて、熊本城で開催される「肥後菊展」の風景。※写真は「熊本城総合事務所」からお借りしました。

菊池の愛好家らが大切に育む、菊のおまつり

菊の花が咲く時期に合わせ、全国各地で菊の品評会が開催されます。菊池市で毎年11月に開催される「菊人形・菊まつり」もそのひとつです。
今年で25回目を迎えるこの催し。はじまりはそれよりさらに10年ほど前にさかのぼります。「菊池の土は水はけがよく、菊の栽培に適しているんです」と教えてくれたのは、菊池市菊まつり推進委員会会長の橋本勉さん。同会の現役メンバーのなかで一番の古株という樋尻和恵さんは、「今ぐらいの時期になると、菊愛好会の人たちが菊池市文化会館のところに菊を持ち寄りよらしたっです。それがあまりにもきれいだったけん、私も菊づくりをするようになりました」と話します。
愛好家らの集まりからスタートし、市をあげての催しに成長した「菊人形・菊まつり」。期間中、会場には色とりどりの大輪菊や懸崖(けんがい)、小菊など約3000点の菊が展示されます。また、南北朝時代に活躍した菊池一族の闘いの場面を再現し、17体の菊人形が並ぶ様は圧巻。今では、菊池市内外から約10万人もの見物客を集める人気ぶりです。
取材に訪れた10月初旬。橋本さんの庭には、今年、武光公(たけみつこう)として展示される予定の菊人形が、小さなつぼみをつけ始めていました。
「まだ今は緑一色ですが、花が開いてきちんと着物の形ができれば、そりゃ立派なもんです。孫にも衣装ですたい」と笑う橋本さん。
21人の愛好家たちがひと鉢ひと鉢、手間ひまかけて育て上げた菊が、今年も菊池の秋をあざやかに彩ります。

【写真(左)】
武光公を模した菊人形。
【写真(右上)】
菊の花が咲く時期にあわせて、菊池市では毎年11月に「菊人形・菊まつり」が開催される。
【写真(右下)】
21人の愛好家たちがひと鉢ひと鉢、手間ひまかけて育て上げた菊。
※写真3点は「菊まつり実行委員会」からお借りしました。

【菊人形・菊まつり】

場所:菊池市隈府 菊池市民広場
期間: 10月31日〜11月15日
時間:9:00〜17:00
観覧料:無料
問/0968-25-7223(菊池市商工観光課)

※この記事は2014年10月に制作したものです。お出かけの際には最新の情報を確認して、ご訪問ください。

【写真(左上)】
菊池市の菊まつりでは、21人の愛好家たちが春先から手塩にかけて育ててきた見事な菊を楽しむことができる。
※写真は「菊まつり実行委員会」からお借りしました。
【写真(右上)】
菊池市役所前で毎月一度、育成勉強会を続ける「菊まつり実行委員会」の皆さん。
【写真(左下)】
約600鉢の菊を育てる、橋本さんのハウス。菊まつり期間中に満開を迎えるよう、開花調整をしている。
【写真(右下)】
菊人形の胴体に用いられるのは、茎のやわらかい小菊。「10月15日頃から少しずつ花が開き始めると思います」と橋本さん。
多彩に広がる菊の魅力

身近な菊の楽しみ方。「ガーデンマム」のすすめ

日本では主に、切り花としてのイメージが強い菊ですが、欧米では「ガーデンマム」などと呼ばれ、ガーデニングに欠かせない花として知られます。こんもりと丸い球状に咲く花の姿が愛らしく、パステル調やニュアンスカラーのものなど、洋風のガーデンやマンションのベランダなどにもよく似合います。
店頭に10数種類のガーデンマムを揃える、平田ナーセリー熊本江津本店を訪ねました。
「10月〜11月の開花時期になると、次から次に花が咲きます。ひと鉢で長い期間、花が咲き続けるのも、ガーデンマムの魅力です」と話すのは、同店店長の切鼻将晴さん。「夕映えの花姿を見て以来、ガーデンマムに夢中になった」という切鼻さんのおすすめは、テラコッタの寄せ植えです。寒さや直射日光にも比較的強いため、ガーデンへの地植えも可能。越冬後、春先に挿し芽をすれば何年にも渡って楽しむこともできるそうです。
世代や住む場所を問わず、楽しめるガーデンマムで、秋のガーデニングをはじめてみてはいかがでしょうか。

【平田ナーセリー熊本江津本店】

住所:熊本市東区江津2-28-36
電話:096-375-4810
営業時間:10:00〜18:30

高貴な菊の花を、ウエディングやブーケに。

最近では、さまざまな種類の菊がつくられるようになりました。ゴージャスなフルブルームマムやコロンとかわいいピンポン菊、スプレーマムなどは、フラワーアレンジでも人気の花材のひとつです。
熊本市でフラワーコーディネートを手がける「One Flower」でも、菊を使ったウエディングブーケや会場装花が話題です。
「色や形もさまざまで、和洋を問わないコーディネートができるのがマム(菊)の魅力です」とは、同社のフラワーコーディネーター川元照子さん。
また、全国的には、2020年の東京オリンピックに向け、スプレイマムを使ったビクトリーブーケを提案しようという動きもあるそうです。

食して愉しむ、菊

菊の滋味を満喫。家庭でできる菊レシピ。

菊は、和食の世界で秋の食材のひとつとして用いられます。最近ではスーパーなどでも、食用菊として販売されていることもしばしば。そこで、秋の滋味を味わう料理として、家庭でできる食用菊の簡単レシピをご紹介します。
ご協力いただいたのは、熊本市西区城山半田の「旬菜鮮美 香風(かふう)」の代表 竹田直己さんです。
「刺身に菊を添えるのは、菊の持つ解毒作用を期待してのこと。ビタミンやミネラルなど、さまざまな栄養を含む食材でもあります。彩りだけでなく、食感や香りも魅力。秋の食材として是非、楽しんでいただきたいですね」と竹田さん。シャキシャキとした歯ごたえや風味を味わう、和えものを教えていただきました。

【写真(左)】
菊は和食の世界で秋の食材のひとつとして用いられている。
【写真(右)】
食用菊のレシピを教えていただいた熊本市西区城山半田の「旬菜鮮美 香風」代表・竹田直己さん。
菊の酢のもの
菊のおひたし
食用菊のごまあえ

【旬菜鮮美 香風】

住所/熊本市西区城山半田1-8-23
電話/096-329-8288
営業時間/11:00〜14:30(OS14:00)、17:00〜22:30(OS22:00、21:00以降は要予約)
休/水曜不定

五感で味わう、菊の和菓子。

和菓子の世界では折々に、季節の植物を模した上生菓子が作られます。菊もそのひとつです。「菊は、秋の和菓子の代表格。形や色、味わいだけでなく、菓名(かめい=菓子の名前)の響きなど、五感で季節を楽しむのが和菓子の醍醐味です」とは、川尻六菓匠の一人でもある立山學さん。立山さんのお店には、9月〜11月の末にかけ、大輪菊を模した「清雅(せいが)」や、小菊を模した「山路の菊」など、月替わりで菊の上生菓子が並びます。
おいしい抹茶と菊の菓子で、秋の夜長を愉しむのも乙なものです。

【写真(左上)】
(左から)11月の末にかけて作られる菊の上生菓子。大輪菊を模した「清雅(せいが)」、小菊を模した「山路の菊」、そして「秋の色」。
【写真(右上)】
「親父が菊好きで、庭にはたくさんの菊が咲いていました。その美しさと清らかな香りが大好きで、菊っていいなと幼心に思っていたものです。そうした季節の風景が和菓子の原点でもあります」と、立山學さん。
【写真(左下・中央下・右下)】
細やかな細工の菓子が作り出される様子に、思わず見とれてしまう。

【菓匠 たてやま】

住所/熊本市南区川尻4-1-43
電話/096-357-9356
営業時間/9:00〜21:00
休/なし