一年で最も暑さが厳しくなる「大暑」。この時期には、少しでも暑さをしのいで元気に、そして毎日を心地よく過ごすための工夫や知恵が、古くから取り入れられてきました。
そして、続く「立秋」。暦の上では秋が始まるのに、まだまだ夏真っ盛り。それでも蜩(ヒグラシ)の鳴く声や、秋の草花(ススキ、萩…)、秋の雲など、季節の移り変わりを感じる瞬間があります。
今回は、「夏の土用」の意味と食べ物、古くからある夏の飲物「甘酒」の持つ力、そして五節句の一つ「七夕」(旧暦では8月20日)にも関連する竹にちなんだ「竹細工」の手しごとをご紹介します。

2015年の夏の土用は7月20日から8月6日まで。夏の土用には、「う」のつく食べ物、または「黒い」食べ物を食べると身体に良いとされています。


夏の土用の丑(うし)の日
キーワードは「う」のつく、そして「黒い」食べ物。
「土用」と聞くと、夏の「土用の丑の日」を連想しますが、土用は春夏秋冬の各々最後の18日間を指します。また、現在では冬の土用の最終日を「節分」と呼んでいますが、もともとは全ての季節の土用の最終日が、季節の変わり目を指す「節分」にあたります。土用の期間中には、農作業で土を触ること、種を蒔くことなどを避ける「禁忌(きんき)」があります。
夏の土用は立夏から立秋の前日までの季節を指す7月20日から8月6日までの期間で、最終日の8月6日が「夏の節分」です(2015年)。
一年で最も暑い「大暑」の時期と重なる夏の土用。厳しい暑さを乗り切るためにも、夏の土用の丑(うし)の日には、「う」のつく食べ物、または「黒い食べ物」を食べると良いとされ、江戸時代には平賀源内が、うのつく黒い食べ物として「鰻を食べる」提案をしたことから、その風習が広がったといわれています。(良いとされる食べ物は全ての季節の土用によって異なります。※食べ物については諸説あります)
ちなみに2015年の夏の土用の丑の日は2日あります(7月24日と8月5日)。
鰻はもちろんですが、様々な「う」のつく食べ物(うどん、梅、瓜…)、または「黒い食べ物」(黒皮カボチャ、ひじき、海苔…)などを夏の土用の期間や丑の日の食事に取り入れて、この夏を元気にお過ごしください。


夏の風物詩「甘酒」
飲む点滴と言われる「甘酒」の持つ力
「甘酒」の起源は、日本書紀にも記述が残っている「天甜酒(あまのたむざけ)」だといわれています。
現在では、甘酒は寒い冬に飲むイメージがありますが、平安時代には貴族が真夏に、江戸時代になると甘酒売りが登場し、庶民は夏バテ防止や暑気払いに「甘酒」を飲んでいたとか。そのため、「甘酒」は俳句で夏の季語なのです。
甘酒は栄養価も高く、「飲む点滴」と言われるほど。夏の暑さにバテた体には最適な飲み物かもしれません。冷たいジュースやアイスの代わりに、冷やした甘酒で体力を補うのも良いでしょう。
今回は、大正8年に創業し、味噌・醤油・調味料・米麹を使った甘酒などを製造・販売している、熊本市北区貢町の「橋本醤油」。4代目・橋本和彦さんに、米麹で作った甘酒の成分や、効果的な飲み方について教えていただきました。
「米と麹だけで作った甘酒には、グルコース(ブドウ糖)、10数種のアミノ酸、オリゴ糖、レジスタントプロテインなどが含まれています。グルコースは体内時計をリセットする働きがあり、体温を上げたり免疫力を高める効果があるといわれています。また、レジスタントプロテインはコレステロール低下や脂質代謝改善作用などがあるといわれています。夜更かしすることが多い夏には、朝起きてすぐにそのまま、または豆乳と半々の割合で混ぜて飲んだりすることで体内時計をリセットし、1日を元気に過ごすことができます。お好みで温めても冷やしてもいいですし、食欲がない時、病気で食事が取れない方の栄養補給にもおすすめです。米麹で作る甘酒はアルコール分を含まないため、お子さんも安心して飲んでいただけます」と橋本さん。
猛暑の時期や、季節の変わり目に、甘酒を飲んで体調を整えてはいかがでしょうか?

- ■橋本醤油合資会社
- 所在地:熊本市北区貢町780-7(フードパル熊本貢地区)
問合せ:TEL.096-288-0811
ホームページ:http://www.tamagosyoyu.com/(別窓リンク)
くまもと竹取物話
水俣で青竹細工を手掛ける井上克彦さんと、県内の竹の手しごと
「木六竹八塀十郎(きろくたけはちへいじゅうろう)」ということわざがあります。“木は6月、竹は8月に切り、塀は10月に作るのが良い”という意味です。旧暦の8月は現在の10月頃にあたり、その頃が竹を切るのに最も適しているといわれています。また、生命力に溢れ、まっすぐに成長することから神聖な植物とされた「竹」「笹」に関連の深い「七夕の節句」は、新暦では7月7日に行いますが、旧暦では8月20日(2015年)の行事です。
水俣はもともと竹細工が盛んに行われている地域の一つで、炊いたごはんを入れる“ご飯じょけ(飯籠)”、川蟹を獲るために仕掛ける“がねてご”、農作業などで背負う“かれてご(からいてご)”など、生活の道具として竹細工が用いられてきました。漁の際にいわしを船で運ぶための竹細工“いわしかご”など、大きな道具が現在も使われています。
水俣市古里で青竹細工による竹かごや竹ざるの制作を手掛ける、井上克彦さんを訪ねました。神奈川県出身の井上さんは、職人の手しごとに興味を持ち、30歳の時に水俣市の竹細工職人・渕上泰弘さんに弟子入りし、3年間の修業の後に独立しました。「10月・11月頃は竹の成長が止まり、栄養分が少なくなるため、虫がつきにくくなります。そのため、その頃に切るのが良いとされてきました」と井上さん。
井上さんは、毎年10月・11月の下弦の月が新月に欠けていく頃、水俣の竹山に入り、一年分の竹を切ります。また、土用の大土(おおつち)・小土(こつち)という、土の中で土公神様が休んでいるとされる日は、竹を切るのは避けるそうです。
竹細工には、竹の油をお湯で炊いて油分を抜く「白竹」と、井上さんのように青竹をそのまま使う手法があります。井上さんは一本一本異なる竹の性質を見極め、竹の声を聞きながら「竹がなりたいような形」に仕上げていきます。
竹細工は修理をしながら100年は使えるといいます。井上さんが手掛ける青竹細工を50年後に手直ししてくれる職人さんがいることを願わずにはいられません。


- ■ホームページ(井上さん)
- http://kago-zaru.sakura.ne.jp/(別窓リンク)

- ■「ただいま!水越」Facebook
- https://www.facebook.com/pages/ただいま水越/212217445613357?fref=ts(別窓リンク)

- ■桑原竹細工店
- 所在地:八代市日奈久上西町497-1
電話:0965-38-2621