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#028

一時の温かな日差しに、春の近さを感じる「立春」と「雨水」の頃。

余寒の中でも、こよみの上では春。旧暦では、立春が新たな一年の始まりとされました。
毎年ウグイスが鳴き始める頃に催される「玉名盆梅展」、バレンタインにちなみ「熊本のチョコレート」、そして九州で唯一、籠彫りの技術を持つ「欄間彫刻師」をご紹介します。

今日は何の日?

03/19

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【二十四節気】
【七十二候】

冷たい風の中に、ふと春の温もりを感じる頃。こよみの上では一年が始まる、清々しい時期です。
樹齢およそ50~200年の希少で美しい盆栽が並ぶ「玉名盆梅(ぼんばい)展」。その会場である蓮華院誕生寺奥之院の院代・川原啓照さんと、期間中盆栽の管理を担う盆栽作家・徳永功さんに、その醍醐味と楽しみ方を教えていただきました。
次に、「くまもと手しごと研究所」Facebook・熊本エリアキュレーターの北川博喜さん(パティシエ・ショコラティエ)に人と地域の絆から生まれた熊本のチョコレートのお話、そして九州で唯一“籠(かご)彫り”の技術を持つ欄間彫刻師・徳永政男さんの素晴らしい作品をご紹介します。

盆栽の醍醐味を知る
玉名盆梅展
「蓮華院誕生寺 奥之院」(玉名市築地)では、毎年 “黄鴬見睨(うぐいすなく:ウグイスが鳴き始める)”頃、「玉名盆梅展」が始まります。今年も、梅、小岱松、椿など樹齢およそ50~200年の希少で美しい盆栽が展示されます。
会場である「蓮華院誕生寺 奥之院」院代の川原啓照さんと、期間中盆栽の管理を担う盆栽作家の徳永功(いさお)さんに、催しの内容と、盆栽の醍醐味・楽しみ方について教えていただきました。
人との絆から生まれた
チョコレートのお話
チョコレートをこよなく愛するパティシエ・ショコラティエの北川博喜さん。平成26年にエクアドルを訪れ、有機栽培のオーガニックカカオの生産現場を見学したことがきっかけで、熊本県産食材を使った「熊本地産ショコラ」を開発しました。昨年(平成28年)の熊本地震後に3店舗の仲間と取り組んだ「熊本地震復興マカロン」、和菓子職人の兄とのコラボレーションなど、人との絆や関わりを通して生まれたチョコレートのお話をお届けします。
九州で唯一の「籠彫り」
欄間彫刻師・徳永政男さん
「欄間彫刻」は、木板材に縁起物である松・竹・梅、菊、鶴、七福神、高砂など複数のモチーフを立体的に彫ったもの。その作品を日本間の天井と鴨居の間の開口部に飾ることで、伝統の技術や美を楽しむと共に、家内安全を願うものです。
7~12㎝ほどの厚い板に彫刻を施すことを「籠(かご)彫り」といいます。九州で唯一その技術を継承する「彫美堂」(熊本市東区石原)代表の徳永政男さん。その高度な技術と感性から生まれる、躍動感溢れる作品をご紹介します。

盆栽の醍醐味を知る

玉名盆梅展

桜、桃など春を代表する花に先駆けて開花する「梅」。
「蓮華院誕生寺 奥之院」(玉名市築地)では、毎年 “黄鴬見睨(うぐいすなく:ウグイスが鳴き始める)”頃、「玉名盆梅(ぼんばい)展」が始まります。今年も、梅、玉名市の小岱山に自生する小岱松、椿(肥後椿、ヤブツバキ、コチョウワビスケ…)など樹齢およそ50~200年の希少で美しい盆栽が展示されます。
その一鉢に四季の景色があり、手をかけることによって長く生き続ける盆栽。この催しの会場である「蓮華院誕生寺 奥之院」院代の川原啓照さんも、日頃から盆栽を育てています。「1日2回水をあげて、子供にごはんを食べさせるように慈しみながら育てています。鉢の中の小さな世界で、緑を芽吹かせ花を咲かせる様子を見ていると、生命の大切さや尊さを感じます」
この催しで盆栽の管理を担うのが「樹心園(きごころえん)」(玉名郡長洲町)を営む盆栽作家の徳永功(いさお)さん。期間中に開催される盆栽教室の講師も務めます。徳永さん曰く、「盆栽の醍醐味は、その木の年代を表す“木肌”。そして“幹”や“枝”がほぐれる(細く趣深く広がる様)景色です。それらを十分楽しんだ後、花の美しさや香りを五感で味わってみてください」
なお、期間中の毎週土曜日と日曜日(各日11:00~、13:00~、14:00~)に開催される「大茶盛(おおちゃもり)」は、今からおよそ760年前に蓮華院誕生寺の総本山である奈良の「西大寺」で始まったお茶会。献茶を行った後、直径40㎝ほどの大きな小岱焼の器に入れたお茶を10名ほどで飲み回す茶儀です。一つのものを共に味わい、和み、結束を深めるという“一味和合(いちみわごう)”の精神は、盆栽を愛でる姿勢にも通じています。

【第15回玉名盆梅展】
期間:平成29年2月10日(金)~3月5日(日)
会場:蓮華院誕生寺 奥之院(玉名市築地字小岱1512-77/TEL 0968-74-3553)
問合せ:玉名観光協会 TEL 0968-72-5313
料金:無料(大茶盛は拝服料1人1,000円)
●松風会盆栽展:2月10日(金)~17日(金)
●椿展:2月18日(土)~25日(土)
●小岱松展:2月26日(日)~3月5日(日)
※期間中の日曜日13:00から、盆栽作家・徳永功さんによる盆栽教室を開催(盆栽持ち込み可。盆栽の素材販売も行います)
【期間中のその他の催し】
大茶盛(おおちゃもり)※期間中の毎週土曜・日曜の各日11:00~、13:00~、14:00~ 開催/「絵手紙展」/仏教詩人「坂村真民展」/お茶づけグランプリ(2月11日[土・祝]、12日[日])/クラシックカーフェスティバル2017(2月12日[日])/お寺deマルシェ(2月19日[日])
【写真(左)】
「蓮華院誕生寺 奥之院」院代の川原啓照さんと、川原さんが所有する樹齢およそ150年の小岱松の盆栽。「曾祖父が大切に育てていた松なども大切に引き継いでいます」
【写真(右)】
小岱松の特徴は木肌の“荒れ方”。「幹の木肌は年代を表すもの。人と同じく、重ねた年月はお金では買えない貴重なものです」と盆栽作家の徳永さん。
【写真(左)】
催しの期間中、盆栽の管理を担う盆栽作家の徳永功(いさお)さん。徳永さんは愛好家の盆栽を預かり、希望の枝づくりを手伝ったり、メンテナンスも行っている。「盆栽を長く育て楽しむコツは、一人で頑張らないこと。木の具合が悪かったり留守で不在の時などには、専門家に預けることもできます」
【写真(右・上)】
樹齢およそ70年の紅梅。
【写真(右・下)】
樹齢およそ110年の野梅(やばい)。
過去に行われた「玉名盆梅展」の模様。
(写真は「蓮華院誕生寺」様よりお借りしました)

人との絆から生まれた

チョコレートのお話

「欧風創作菓子 メゾン・ド・キタガワ」(熊本市南区田迎)のオーナー・北川博喜さんは、チョコレートをこよなく愛するパティシエ・ショコラティエ。「くまもと手しごと研究所」Facebookでは、熊本市エリアのキュレーターとして季節の行事にまつわるお菓子やチョコレートについて情報を発信していただいています。
平成26年、北川さんはエクアドルのサン・ノゼ・エル・タンボ農園を訪れ、店で使用している有機栽培のオーガニックカカオの生産現場を見学しました。愛情を持って丁寧に栽培し、加工を行う人々の様子に感動し、「このカカオの素晴らしさを生かし、熊本の食材を組み合わせたオンリーワンのチョコレートを作ろう」と決意。水俣の紅茶、阿蘇産ブルーベリー、菊池産マンゴー、山都町の柚子と蜂蜜など熊本県産食材を使った「熊本地産ショコラ」を開発しました。「現在は熊本県産の果物、お茶などの農産物を主に使っていますが、今後はお酒をはじめ多くの食材の中からチョコレートと相性の良いものを探していきたいと考えています」と北川さん。
昨年(平成28年)4月に起こった熊本地震。たまたま注文があり用意していたパン生地と、兄(熊本市南区川尻町「天明堂」・北川和喜さん)の店のあんこを使って、1週間あんぱんを焼き続け、配布したり販売を行った北川さん。また、“カカオハンター”として世界を飛び回る小方真弓さんから届けられたコロンビア産カカオ20㎏を使い、熊本県内の洋菓子店3店(パティスリー・ビジュー/サンタプレ/ロアゾー・ブルー)と一緒に「熊本地震復興マカロン」を作り、売り上げの一部を熊本地震義援金として寄付しました。
いつもにも増して人との絆や関わり、熊本のことを考えたこの一年。さて今年のバレンタインは、誰に感謝や愛を込めて、どんなチョコレートを贈りますか?

【写真(左)】
「欧風創作菓子 メゾン・ド・キタガワ」オーナーの北川博喜さん。北川さんによると、今年(平成29年)のバレンタインのチョコレートの傾向は「クッキーでチョコレートをサンドしたタイプの商品が主流」とのこと。北川さんの店にも20アイテムほどのチョコレートやチョコレートのお菓子が並ぶ予定。
【写真(右)】
熊本地震の後、1週間夢中で作り続けた“あんぱん”がきっかけで誕生した、北川さん(パティシエ・ショコラティエ)と兄・北川和喜さん(和菓子職人)とのコラボ商品「パヴェ・ド・カワシリ(川尻の石畳)」。2種のようかん(柚子・抹茶)を2種のチョコレート(ビター・ミルク)でコーティングした、お茶にも合う新感覚のチョコレート。
「熊本地産ショコラ」は、天草晩柑、八代のイチジク、八代のはちべえトマト、熊本ワイン、菊池のマンゴー、阿蘇のブルーベリー、水俣の紅茶、鹿北の岳間茶、氷川町のイチゴ、山都町の柚子と蜂蜜、天草の塩、小川町の新生姜、熊本県産の栗、熊本県産の晩白柚はちみつを使用した14種と、エクアドル産オーガニックチョコのビターガナッシュ。
1つからでも購入できる。
エクアドルの「サン・ノゼ・エル・タンボ農園」を訪れ、初めて食べたフレッシュなカカオは「ライチみたいな味だった!」と北川さん。店内で農園のカカオの収穫や加工風景のパネルを展示し、紹介している。
■問合せ:メゾン・ド・キタガワ
所在地:熊本市南区田迎2-18-15
TEL 096-334-2220
URL:http://md-kitagawa.com/(別窓リンク)

九州で唯一の「籠彫り」

欄間彫刻師・徳永政男さん

欄間(らんま)とは、日本間の天井と鴨居の間に採光、通風、換気、装飾などの目的で設けられている開口部のこと。その装飾の一つに「欄間彫刻」があります。木板材に縁起物である松・竹・梅、菊、鶴、七福神、高砂など複数のモチーフを立体的に彫ります。その作品を飾ることで、伝統の技術や美を楽しむと共に、家内安全を願いました。
欄間彫刻には、12mm程度の薄い板を使用する「薄彫り」と7~12㎝ほどの厚い板を使用する「籠(かご)彫り」があります。籠彫りは難易度が高く、九州でその技術を継承するのは「彫美堂」(熊本市東区石原)代表の徳永政男さん唯一人です。
徳永さんは高校卒業後、熊本市内で欄間彫刻店を営んでいた父の下で働きながら薄彫りを習得。その後、北陸や京都で籠彫りの修業を積んで帰熊し、30歳で独立しました。
「籠彫り」に使用する木材で最も高級なものは屋久杉。しかし、高価で入手が難しくなった近年では、クスノキ、サクラ、ケヤキ、イチョウや、屋久杉の肌目に似た台湾産の紅檜(べにひ)を主に使用します。「組(2枚1対)」を制作するのに必要な期間はおよそ3~4カ月。高い技術と感性、そして500本もの彫刻刀を巧みに使い分けることで、一枚の厚い木の板から樹や鳥、花などがまるで生命を得たかのように、いきいきと躍動を始めます。
「時代の流れで建築様式が変わり、新築の家に日本間が減ったことで、欄間の依頼も少なくなりました」と徳永さん。昨年(平成28年)の熊本地震で、徳永さんの自宅兼店舗も被災し、店舗に置いていた欄間の多くが破損してしまいました。
今後も、徳永さんが培った素晴らしい伝統の技が次の世代に伝承され、新しい形で活かされていくことを切に願います。

■問合せ:彫美堂(ちょうびどう)
TEL 096‐380‐3791
※電話に出られない場合があります。
【写真(左)】
徳永さんは、平成4年に熊本県伝統的工芸品指定者に認定。平成12年からの8年間は熊本県伝統工芸協会長を務めるなど地域の文化振興に大きく貢献した。平成25年には、文化振興に貢献する活動を行った方々にその功績をたたえ、今後の活動を推奨する「第23回くまもと県民文化賞」の地域文化活動部門で受賞。
【写真(右)】
500本ほどのノミを使い分け、木版材に立体的な彫刻を施していく。鳥、木々、花などいくつものモチーフが重なり、一つの世界観を生み出す。「ノミは自分の手作り。仕事を始める前には、まず道具の手入れを行います。一見同じようなノミも、刃の角度などが微妙に違います」と徳永さん。
【写真(上)】
7~12㎝の板にいくつものモチーフを籠状に重なるように立体的に彫る“籠彫り(厚彫り)”。この作品のモチーフは「松に鶴」。
【写真(下・左)】
気品があり高潔な様が君子に例えられ“四君子(しくんし)”と呼ばれた、蘭・菊・梅・竹。2枚1組の欄間のうち、菊と竹が彫られた1枚。
【写真(下・右)】
木肌の細部まで美しく表現された「松」。
まず10分の1のサイズで下描きし、次に実寸で図柄の細部まで描き、その後、木版に直接下絵を描いて、ノミと彫刻刀を使い彫り進めていく。
徳永さん自身も気に入っているという欄間彫刻「群鶴(むれづる)」。(熊本県伝統工芸館にて撮影)

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