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寒露初候   鴻雁来[がんきたる]

アーティストのように、恐さや不安を昇華して作品を作れないかもしれないが、私達は、その恐さを越えてきた力強さは知らず知らずに身につけてきたかもしれない。

2021年10月12日更新
【キュレーター】 浦 ひとみ 熊本エリア

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10月に入っても連日暑い日が続く熊本。
10月に30℃を超える「真夏日」が昨日、10月11日まで連日続き、観測史上を連日更新していました。
そんな熊本ですが、朝夕は、涼しい秋風が吹き、秋桜がその可憐な姿で道行く人の眼を楽しまれてくれています。
熊本のマチナカで開催されています展覧会をご紹介します。
びぷれす会館の3階にあります熊本市現代美術館で開催中の「こわいな!恐怖の美術館」展。
今年は、確かにまだ暑いけれど、
秋に
「こわい=お化け屋敷?」と最初、私も思いました。
入口は、期待を裏切らないお化け屋敷から。
私も、お化け屋敷に入りましたが、ネタバレになるといけませんのでここでは割愛させていただきます。
お化け屋敷を抜けると、カラフルで個性的な立体に目が止まります。
ここから田名網 敬一ワールドが始まります。
田名網さんは、1945年、9歳の時に東京大空襲を経験され、この時に見た数々の光景が、後に田名網が描き出す作品の主要なモチーフになったと言われています。
ポップでカラフルなイラスト、デザインワークは、国内外で高く評価されています。
一転、照明のトーンが暗くなり、オディロン・ルドン氏の作品が並びます。
オディロン氏は、南フランスボルドーで生まれています。
独自の道を歩んだ孤高の画家と呼ばれるルドン氏は、
病弱で内向的な子供であったという。
そして、少しだけ明るくなった部屋には、
熊本出身で版画家で彫刻家の浜田知明氏のブロンズ像や版画。
1917年(大正6年)熊本県御船町に生まれた浜田知明氏は、棟方志功、浜口陽三、駒井哲郎らと並び、第二次大戦後の日本を代表する版画家の一人。
そして、黒いカーテンの下をくぐると天井には満天のお星さま、そして、周りを翔ぶ夜の鳥。
熊本市動植物園の動物のバネルも描かれているコーダ・ヨーコさんの作品。
思わず「綺麗」と叫んで、その後、作品のキャプションを読んで「絶句」する。
足を進めると白い大きな画用紙のような壁に書かれたいしいしんじさんのものがたり。
優しさに溢れるその文字や文面から優しさが伝わってくる。
日常に流されて曖昧にしてきた自分の気持ちに気づかされる。
熊本地震から5年。あの大きな揺れは、「地球が壊れている?」と明日が来るか恐かった。
そして、1000回を超えた余震は、過ごしている日常がいきなりストップして、「こんな日がずっと続いたら~」と少し先の未来がどうなるのか、恐かった。
人は、現在、近くあるいは遠い未来に恐さを感じて過ごしているのかもしれない。
展覧会のアーティストのように
恐さや不安を昇華して作品を作れないかもしれないが、
私達は、その恐さを越えてきた力強さは知らず知らずに身につけてきたかもしれない

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